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NINE ナイン [アメリカ映画(00s)]

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NINE (2009)

1993年、深刻な不景気から立ち直る前のニューヨーク・ブロードウェイ。ここで1本のミュージカルがオープンしました。1992年にロンドンのウエストエンドで始まった戯曲「蜘蛛女のキス」をミュージカル化した野心作です。
ロンドンで好評を博したこのミュージカルは、ニューヨークでの前評判も良く、私は映画版「蜘蛛女のキス」がとても好きだったので早速公開したばかりのミュージカル版を見に行きました。ブロードウェイでは伝説の女優チタ・リベラが蜘蛛女役を演じると言うことで劇場は異様な熱気に包まれていたのを覚えています。ミュージカル版「蜘蛛女のキス」はジョン・カンダーとフレッド・エップの素晴らしい楽曲、リベラたち役者人の熱演でとても素晴らしかったです。その舞台で振り付けをしていたのがロブ・マーシャルという若者でした。

アメリカの田舎ウイスコンシン州出身のロブ・マーシャルは、ペンシルバニア州にあるカーネギー・メロン大学を卒業し、ニューヨークのブロードウェイで振り付け師として成功しました。彼のブロードウェイまでの人生は正に現代のアメリカン・ドリームで、1993年の「蜘蛛女のキス」で彼の仕事は高く評価されました。その後、1994年には「くたばれヤンキース」、1998年には「She Loves Me」、1999年には「キャバレー」でトニー賞にノミネートされます。

マーシャルは、今後も順風満帆にブロードウェイの演出家、振り付け師として歩んでいくのだろうと思っていたところ、いきなり映画監督へ転身するというニュースが入ってきたのです。これには当時の舞台ファン、映画ファンは驚きました。しかしマーシャルが監督する作品が「シカゴ」であることで誰もが納得したのです。
マーシャルは自他共に認めるボブ・フォッシーの大ファンです。ボブ・フォッシーは、舞台の演出家・振り付け師であり、その後映画監督に転身しています。そしてフォッシーが企画して実現しなかった「シカゴ」の映画化を実現するにはマーシャル以外考えられないのです。

大きな気体を背負って、マーシャルは映画版「シカゴ」を監督します。フォッシーは主人公をマドンナで企画していましたが実現せず1987年に他界しました。マーシャルは主人公にレニー・ゼルウィガーを抜擢、脇にキャサリン・ゼタ=ジョーンズやクイーン・ラティファを配置して素晴らしい作品に仕上げました。なんとこの「シカゴ」は2002年のアカデミー賞12部門にノミネートされ、作品賞を含む6部門で受賞してしまいました。ゴールデングローブ賞でも作品賞を含むメインのカテゴリーを制覇します。
マーシャルは、舞台で評価されただけでなく映画でも最速でトップ評価されてしまいました。

前置きが長くなりましたが、そのロブ・マーシャルが「Memories of a Geisha」の次に映画監督として選んだのがこの「NINE」です。

皆さんはフェデリコ・フェリーニ監督の「8 1/2」(1963)という映画をご存じでしょうか?「道」(1954)、「甘い生活」(1959)などで有名なイタリア人監督の自伝的な映画です。彼はそれまで8本映画を撮っていて9作目の手前に自身の苦悩を描いた名作です。

この「8 1/2」をミュージカル化したのが「NINE」です。フェリーニの映画を見事にミュージカル化しておりとても素晴らしい舞台です。ミュージカル版は大成功しロングラン公演が行われました。そのミュージカル版を今度は映画にしようというわけです。

なので基本的に「NINE」は、「8 1/2」とほぼ同じストーリーです。ただ、複数の女性に翻弄されるひとりの男という要素が強くなっているように思います。

この企画は2007年にヴァラエティ誌により制作が発表されました。製作出資は「シカゴ」で製作をバックアップしたワインスタイン兄弟です。「イングリッシュ・ペイシェント」(1996)、「コールドマウンテン」(2003)のアンソニー・ミンゲラが脚本をリライトし撮影を開始する予定でしたが、アメリカ脚本組合のストが起こり脚本制作がストップしてしまいます。その間にミンゲラは54才という若さで病死してしまいました。その後ストは収束しミンゲラが書き残した台本を使い撮影が開始されたのは2008年10月でした。
主人公の"女に翻弄される映画監督"グイド役には「ノー・カントリー」「それでも恋するバルセロナ」のハビエル・バルデムがキャスティングされていましたが、ストにより撮影スケジュールが変わってしまったので、バルデムは降りダニエル・デイ=ルイスが新たに選ばれました。
今回はキャスティングに苦労したようで、主役の交代劇の他にも「シカゴ」でマーシャルと一緒に仕事をしたレニー・セルウィガーとキャサリン・ゼタ=ジョーンズは、役が気に入らず降板しています。
それでも、最終的にはアカデミー賞を受賞している名女優達(ニコール・キッドマン、ジュデイ・デンチ、マリオン・コティヤール、ペネロペ・クルス)が参加を表明、イタリア映画界の大女優ソフィア・ローレンも参加するというとても豪華な俳優陣となりました。
ちなみに、キャサリン・ゼタ=ジョーンズのやるはずだったクラウディア役はニコール・キッドマンが担当しています。ペネロペ・クルスはクラウディア役でオーディションを受けましたがカルラ役になりました。マリオン・コティヤールは、ジュデイ・デンチが演じた衣装デザイナーのリリー役のオーディションを受けましたがグイドの妻のリリーとなりました。ケイティ・ホームズとデミー・ムーアもオーディションを受けましたが落ちました。

映画はシネスコの画角を最大限に活かした素晴らしい映像で撮影されました。撮影監督のディオン・ビープはとても優秀な人です。「Memories of a Geisha」のメイキングでも感心させられましたが、自然光とライティングをここまで巧みに使いこなすカメラマンは彼くらいではないでしょうか。勿論撮影後のデジタルグレーディングも丁寧に行われています。
音楽は素晴らしくミュージカル版同様クオリティがとても高いです。ミュージカル版にはないケイト・ハドソン演じるファッション記者が歌うオリジナルソングも素晴らしいです。
また、イタリアの美しい風景や60年代の美術デザインや衣装も素晴らしいです。
「NINE」は、映画が総合芸術であることを我々に視覚的に教えてくれるのです。

映画は概ね好評で、世界中の映画賞でノミネートされましたが「シカゴ」ほどの受賞と評価は得られませんでした。

私は東京のIMAXシアターで大画面&シネマスコープという贅沢な環境でこの映画を見ることが出来ました。あまりの素晴らしさにとても感動しましたが、約300人のお客さんの中で男性は私だけでした。やはり女性のほうが、芸術に敏感なのかなあと思いつつ、この映画を評価している日本人男性がきわめて少ないことに寂しさを感じました。

まだ日本は古いジェンダールールが残っているんだなあと気づかされた映画でもありました。

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フロスト×ニクソン [アメリカ映画(00s)]

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Frost/Nixon(2008)

ハリウッドスタジオのエクゼクティブと食事をすることがあります。彼らは皆寛容なふりをしつつ繊細な心であることを感じます。もちろん大きな制作費を扱う仕事はとてもタフです。そして有名人や映画監督プロデューサー達と友好関係を築く必要があります。朝早くから夜遅くまで、我々のイメージするアメリカ人とは異なり、日本のビジネスマン以上に働く彼らの凄さには驚かされます。
そんな彼らに共通することがあります。それは、とても良い靴を履いているのです。きっと一足数十万する靴を磨き上げて履いているのです。仕立ての良いスーツを着込んでいるのは当たり前ですが、何故かハリウッドスタジオのエクゼクティブは明らかに高級な靴を履いています。

映画「フロスト×ニクソン」には、靴に纏わる話が登場します。勿論メインストーリーとは関係ない話なのですが、この靴という小さなキーワードが映画に輝きを与えているのです。

こんな書き出しだと、皆さんはこの映画がいったいどんな映画なんだ?と驚かれるでしょう。映画は、第37代アメリカ大統領、そして歴史上ただひとり、任期中に大統領を辞職したリチャード・ニクソンと彼をインタビューする若手インタビュアー デビッド・フロストの事実に基づいたお話です。私は、この映画の主人公デビッド・フロスト氏についてあまり詳しくは知りませんでした。そして、「○○ゲート事件」と呼ばれる元になったウォーターゲート事件に関しても新聞や雑誌による一般的な情報しか知りませんでした。私のような日本人にとってニクソン大統領やウォーターゲート事件は、遠い海の向こうの話でしかなかったのです。当然、この映画にもそれほど興味を持っていませんでした。しかし、数々の賞を受賞していて監督はロン・ハワードだと聞くと、とりあえず見てみようと思い劇場に足を運びました。

この映画は、2つの側面から実際にあった事件を描いています。ひとつは、大統領を引退したニクソンに初めてのインタビューを試みて、ニクソンの事件への関与を浮き彫りにしていくというドキドキするドラマ、そしてもうひとつは、テレビ番組が作られていくうえでの制作陣のバタバタとしたドラマです。映画を見ていない人は、きっとこの映画を前者だと思っていることでしょう。しかし見終わってみると実は後者のほうがストーリーの根幹を貫いていることがわかります。そして、最終的にはニクソンという大物とただのテレビレポーターという人物の人間性や本質をあぶり出していくのです。
シンプルに見えて実に心揺さぶられるこの映画は、ただの事実を映像化しただけではなく作り手が何度も検証した脚本によって成立している希に見る秀作だったのです。

調べてみると、この映画はもともと舞台だったそうです。映画で脚本を担当しているピーター・モーガンが手がけた同名の舞台が世界で上演されていました。舞台というものは、一度たりとも同じものが存在しない世界です。そこで何度も本が直され、映画の脚本に近づいていったのでしょう。細かな台詞は研ぎ澄まされ、ひとことひとことが心に刺さります。そして映画版のニクソン役であるフランク・ランジェラとフロスト役のマイケル・シーンは、オリジナル舞台の配役そのままです。何度も何度も舞台で演じてきた役を映画で演じ直しているのだから、うまくできて当たり前です。瞬き、手の動き方まで意味のある素晴らしい演技を見せてくれます。

映画は、ロン・ハワードの制作会社であるイマジン・エンターテイメントと契約配給会社であるユニバーサル・スタジオのロゴで始まります。その後、なんとワーキング・タイトルのクレジットが出てきます。ワーキング・タイトルは「ノッティング・ヒルの恋人」「ラブ・アクチュアリー」などを制作しているイギリスの会社なのです。なんでイギリスの会社がアメリカの汚点を描くのかわかりませんでしたが、デビッド・フロストはイギリス人だったのです。そしてこの映画を作るのに必要な資金が巻簡単には集まらず、ワーキング・タイトルに資金要請を行ったのでしょう。

ロン・ハワードは、ここで説明する必要もない名監督です。沢山の映画を監督し、沢山の映画賞を受賞してきました。彼が最も得意なのは実際にあった事件を再構築した映画化です。私は彼の作品の中で「アポロ13」が好きですが、そのほかに「バックドラフト」や「ビューティフル・マインド」などの作品を手がけています。勿論商業映画も得意で「スプラッシュ」「身代金」「ダ・ビンチ・コード」なども監督しています。そんな彼が久しぶりに挑んだテーマは、ニクソン大統領の起こしたウォーターゲート事件を追うわけではなく、引退したニクソンを描く「フロスト×ニクソン」でした。
脚本は、舞台を通して既に完成の域に達しており、役者も舞台からの続投です。こうなると監督の活躍する場がないように思われますが、ハワードだからこそできる素晴らしい演出と編集で観客の心を掴んでいきます。特に爆発やカーチェースがあるわけでもないのに2時間という上映時間を感じさせない見事な演出です。

そして、音楽はいつも派手な曲作りを得意とするハンス・ジマーがとても抑えた仕事をしています。「ミッション・インポッシブル」「パイレーツ・オブ・カリビアン」と同じ作曲家とは思えない歴史物語にあう重厚な楽曲を提供しています。

撮影はサルバトーレ・トチノ。開くレンズを多用した撮影技法には驚かされました。そして1970年代を描き出す艶やかな色合いはEFILMのカラーグレーディング・チームの技です。とにかく映像と質感が素晴らしく見入ってしまいました。

驚くべき史実、練り込まれた脚本、成熟した演技、素晴らしい演出、抑えられた芸術的な音楽、艶やかな映像とここまで各部署が磨き上げたファクターを持った映画は、名作になるしかありません。映画は、世界中の沢山の映画賞を受賞しました。第81回アカデミー賞では、作品賞を含む5部門にノミネートされましたがこの年は「スラムドッグ・ミリオネア」に賞が偏り、受賞できませんでした。

「フロスト×ニクソン」、この素晴らしい映画は、日本ではそれほどヒットしませんでしたが、映画好きは是非見ることをお勧めします。映画とは何かという答えがここに詰まっているのです。そして、こういう映画が日本できちんと評価される日がいつの日か来ることを願ってしまいます。

さて、靴の話に戻ります。どうやら高級な靴はハリウッドのエクゼクティブだけでなく、テレビ業界の人も拘っているようです。そして政治家も。そして靴によりその人の個性がこの映画で見え隠れしています。このあたり、是非お見逃しなく!

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アバター [アメリカ映画(00s)]

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AVATAR (2009)

当初の予想を超え、大ヒットしたSF大作「アバター」について記そうと思います。
監督は、ご存じジェームス・キャメロンです。VFXスタッフは、彼が作ったデジタル・ドメインではなく、ニュージーランドのWETAが中心となりました。

この映画が完成するまでに何故10年以上の時間がかかってしまったのかについて記したいと思います。実は、キャメロンは「タイタニック」制作前にこの作品を作りたいと考えていました。ストーリー自体はキャメロンが子供のころから何度も頭に描いていたのでした。しかし当時、この映画を実現する技術がなかったのです。その技術とは話題の「3D表現」ではなく、単に「映像化する技術」です。当時はまだコンピュータを使って映像を作り出す技術の黎明期だったため彼の頭の中にある映像を実際にビジュアル化するのには、沢山の問題がありました。

キャメロンは、映画のために技術を開発するちょっと変わった監督です。彼のように自分の作りたい映画のために新しい技術を開発する監督の先駆者は「スターウォーズ」のジョージ・ルーカスです。彼は「スターウォーズ」を映像化したくて自分でルーカスフィルム、そしてVFX専門会社ILMを立ち上げました。そこで、様々なカメラやレンズ、映像の合成装置を開発し、映画を完成させたのです。その後に続いたのは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」で有名なロバート・ゼメキスです。彼はモーション・キャプチャーという技術とCGに固執しました。役者さんが体中にポイントのついたスーツを着て何もないスタジオで演技をします。それをコンピュータで読み取って、CGアニメのキャラクターを動かす技術です。ゼメキスは「ポーラ・エキスプレス」でこの技術を高め、次の作品「ベオウルフ」で完成させました。現在ではゼメキスの功績によりゲームやアニメなどで幅広くこのモーション・キャプチャーという技術が使われるようになりました。

タイタニック」が大成功し、一生贅沢をして過ごせるほどの財産を手にしたキャメロンは、引退することなく次回作「アバター」の技術開発に集中していきます。ストーリー自体は、彼が子供の頃から考えていたアイデアが元になっています。そのストーリーにリアリティを持たせるため、科学者にコンタクトを取り実際の惑星の成り立ち、生命体の構造などの知識を取り入れ、映像的に破綻しないようブラッシュアップしていきました。この時点で、これから描き出そうとする新しい惑星を映像として完成させるのがとても大変なことがわかってきました。キャメロンは、リアリティのある「嘘」の世界を成立させるための技術を探していったのです。

一番難しい問題は、映画のほぼ全編に登場する惑星パンドラに住む住人達でした。青くて特徴のある顔を持つこの住人達、はじめは人間の役者に特殊メイクアップを施し、森の中で撮影するという方法も模索しましたが、キャメロン監督の望むレベルまで達することができないことがわかります。森自体も地球のそれとは異なった動植物が登場するのです。よって、キャラクターだけでなく背景も地球上で撮影するのはできないのでした。

そんな中、もうひとりの開発系監督ピーター・ジャクソンが、「ロード・オブ・ザ・リング」を発表しました。この映画に登場するゴラムというキャラクターは、映画史上初めて成功したCGキャラです。100%コンピュータで作られたゴラムは俳優アンディ・サーキスがモーション・キャプチャー・スーツを着て演じたデジタルデータを変換しています。なので動き自体と声はサーキスのものですが、それがCGのゴラムに置き換わっているのです。

ジャクソン監督はニュージーランド人です。彼は自国に新しい産業を興そうという気持ちもあり「ロード・オブ・ザ・リング」のためにWETAというVFX会社を作り、そこで映画に関わる全ての技術を作り出したのです。「ロード・オブ・ザ・リング」の世界的大成功の結果、ニュージーランドのGDPが上昇するという数字までたたき出し、映画産業はニュージーランドの新たな産業として成立しました。WETAは、その後ジャクソン監督の「キングコング」で、驚くほどリアルな巨大コングのCG化に成功しています(コングのベースもアンディ・サーキスが演じています)。

「ロード・オブ・ザ・リング」の映像を見たキャメロン監督は、遂にアバターを100%コンピュータ空間で作りだ出せることを確信しました。早速キャメロンはニュージーランドにいるピーター・ジャクソンに連絡を取ります。そしてWETAと共に「アバター」を作ることを決意しました。

キャメロンは「ターミネーター2」を作るためにVFX会社デジタル・ドメインをサンタモニカに作りました。しかし、この会社は経営のために普通のハリウッド映画の制作を手がけるようになり、キャメロンの思いとは違う方向で成功を収めていました。キャメロンは、「トランスフォーマー」でVFX会社を探していたマイケル・ベイ監督にデジタル・ドメインを売却し、WETAと共に「アバター」制作に賭けるという驚くべき手段を取りました。

そして、WETAのチームは、早速パンドラの設定をコンピュータ上に3Dで作りだし、キャラクターのモデリングも始めました。そこには、キャメロンが子供の頃から思い描いていた地球上にはない惑星ができあがっていたのです。

実際に「アバター」の制作が動き出したのは4年ほど前からです。それまでは、このように映像を作り出す技術の模索に時間がかかっていたのでした。さらに、キャメロンには、もうひとつ探し出さなければならない技術がありました ----- それが3Dの撮影システムです。

映画の3D上映技術は、かなり古くから存在していました。
一番古いのは、赤と青のフィルムがついたメガネで見ると立体的になるアナグリフという方式で1850年代には、映画館で飛び出す映画が上映されていました。しかし、この技術は定着しませんでした。
次に登場したのは偏光レンズを使う立体映画です。これは、レンズの傾きによって左右の目に錯覚を起こさせる技術です。メガネは透明なプラスティック製です。ディズニーランドの「キャプテンEO」や「ミクロキッズ・アドベンチャー」などがこの技術で上映されています。
もうひとつの方式は液晶シャッターの着いたメガネを通して立体映像を脳内に作り出すシステムです。この技術、1980年代にビクターによって生産されていました。実は私は当時この液晶シャッターシステムを購入し、今でも自宅に持っています。当時は映画はVHDという規格で販売されており「13日の金曜日3D」「ジョーズ3D」幻の「ダイヤルMを廻せ!3D」などが商品化されていたのです。80年代当時、私は自宅でこれら3D映画を見て熱狂していたのですが、何故か一般には普及しませんでした。理由は液晶メガネにあったのだと思います。液晶で左右の目を交互に隠すという構造はかなり複雑で、当時のメガネはかけられる物ではなく、頭にヘアバンドのような物を装着し、そこにメガネをつるすような重い帽子のようなものでした。当時、立体映画にはとても興奮したのですが、映画一本を見終わると首がとても疲れました。しかも映像とメガネのシャッターが同期する必要があり、プレイヤーからメガネにケーブルが繋がっていたのです。

さて、キャメロン監督は、3D撮影システムをどう解決したのでしょうか。
キャメロン監督は「ターミネーター2」撮影後に、「ターミネーター2 3D」を監督しています。これはユニバーサルスタジオ用のアトラクションです。USJにもあるので見た方もいると思います。この制作で監督は3Dの基礎を勉強しました。そして上映は偏光レンズで行われました。
監督は「タイタニック」後に1本のドキュメンタリーの監督をしました。それは、実際に海に沈んだタイタニック号を立体撮影するという作品です。日本でもこの作品はアイマックスで偏光レンズ方式により上映されました。このようにキャメロン監督は、「アバター」前に2本の3D映画を制作し、様々なテストを行っていたのです。
「ターミネーター2 3D」の時は2台の35mmカメラを使って左右の映像を撮影しました。これはかなり巨大で重く、撮影に様々な制約が生じました。ドキュメンタリーでは、潜水艦に乗る小さなカメラが必要になりました。そこでキャメロンは来日しSONYと一緒に新しい3Dデジタルカメラを開発していたのです。
このSony製カメラをベースに「アバター」用に新しく3D撮影カメラを開発しました。

上映はReal D社、XpanD社、ドルビー社などによる最新のデジタル3D方式で上映することにしたのです。

液晶シャッター式に関しては、既に「アバター」3D版(Xpan版)を見た方はわかると思いますが、80年代の帽子のような有線メガネではなく、現代の液晶シャッター式メガネは普通のメガネとあまり変わりがありません。ちょっとだけ大きいだけです。メガネの真ん中には赤外線受信装置がついていて、劇場では、上映される映像に同期させるための赤外線電波が飛んでいます。この電波をメガネで受け、左右の目を高速シャッターで塞いだり解放したりしています。メガネの中には電池が内蔵されているので、ちょっとだけ重いですが2時間30分の映画を見ても首が痛くなるようなことはありません。

映画「アバター」を完成させるためにキャメロン監督は10年に及ぶ長い技術開発をしていたっと言っても過言ではありません。監督は、遂に今までにない映像を3Dで客さんに届けることに成功しました。その影には沢山の別の作品で培われた技術がベースとなっていることがわかっていただけたでしょう。もし「アバター」を見て映像に驚かれた方は、ここで紹介したルーカス、ゼメキス、ジャクソンら開発系監督の作品をDVDで見返してください。それら作品のDNAが「アバター」に結びついていることがわかるはずです。

さて、今後の3D映画ですが、3Dだから全てが綺麗な立体に見えるわけではないのでご注意ください。撮影技術と上映技術は「アバター」によって完成しました。しかし映像表現は監督やカメラマンによって異なります。キャメロン監督のように立体映像技術を10年もかけて勉強した人ならば、疲れないでストーリーテリングな映画の制作ができるでしょう。しかし、立体映像の特性や制作技術に精通していない監督が3D映画を作ると、見せ物小屋的な駄作になってしまう可能性がとても高いのです。私が危惧しているのは邦画です。きっと技術に踊らされて安易な3D映画が量産されるはずです。残念ながらきちんと3D技術を理解して映画の脚本を作り、知識のある技術陣がそれをサポートするという体勢が日本で作れることはしばらくないでしょう。

「立体映画なんてあたるわけない」、「アバターはアメリカでヒットするが世界的には大失敗だ」とおおくの日本にいる映画関係者は発言していました。しかし、日本マーケットでは80億円規模のヒットになるそうです。これは大ヒットです。

マーケティング至上主義の日本映画界、いつもチャレンジして新しい驚きを提供してくれるキャメロン監督、私は後者に映画の未来があるのだと思います。

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イングロリアス・バスターズ [アメリカ映画(00s)]

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Inglourious Basterds (2009)

今回は、「イングロリアス・バスターズ=名誉なき野郎ども」のお話です。

<第1章:監督>
クインティン・タランティーノ、おおくの映画ファンになじみのある映画監督です。彼は脚本家、プロデューサー、撮影監督、俳優としても知られています。日本ではCMにも出演しているので知名度はかなりあるのではないでしょうか。彼の生い立ちも広く知られています。22際のとき、ロサンゼルス・マンハッタンビーチにあった個人経営のビデオ・レンタル店でバイトをしながら、そこにおいてある映画を見まくり、仲間と映画談義で盛り上がったこと。そのとき見たカンフー映画や日本の任侠映画に傾倒したとことなども有名なエピソードです。そんな彼は映画のプロットライターとしてプロデューサーのローレンス・べンダーに認められるようになり、そのうちのひとつ「トゥルー・ロマンス」がトニー・スコット監督により映画化されることが決まり、自分でも「レザボア・ドッグス」(1992)で映画監督デビューを果たすことになりました。

タランティーノ監督の特徴として、主人公たちが話す会話の中に過去の映画の雑談がおおく使われること、ストーリー全体が、かつてのグラインドハウスと呼ばれるB級映画に強く影響を受けていることがあげられます。本人もこれを意識しており、毎回悪ふざけ映画をギリギリの線でメジャー作品に仕上げる天才です。

2本目の監督作品である「パルプ・フィクション」(1994)で、カンヌ映画祭パルム・ドールを受賞し大ヒット監督の仲間入りをします。その後は「ジャッキー・ブラウン」(1997)、「キル・ビル」(2004,2004)、「グラインド・ハウス:デス・プルーフ」(2007)と自分が見てきた映画の焼き直しとも言えるタランティーノしか作れない作品をリリース、ヒットしてきました。ただあまりに映画オタクの傾向が強く一般のお客さん、特に女性からの支持は得られませんでした。

<第2章:企画から脚本まで>
タランティーノは、同時にいくつもの企画を頭に描き、それが合体したり分離したりしてひとつの作品が完成していきます。この企画は今から10年ほど前、1976年にイタリアで製作された「地獄のバスターズ」という映画をもとに話が始まりました。最終的にはタイトルと戦争映画という要素しか残りませんでしたが、始まりはこのB級映画だったのです。「キル・ビル」の撮影中もスタッフやキャストにこの戦争映画の企画についてタランティーノはよく話していたそうです。しかしその他の企画もベラベラと喋るので、聞いている方はどの企画が実現するかは全くわかなかったそうです。タランティーノは、いろいろな人に自分の企画を話しながらストーリーを整理し、ひとりの時は歴史を勉強し、過去に見た1940年代の映画を反芻し、だんだんと「イングロリアス・バスターズ」のストーリーが生まれていったのです。そして2008年7月2日、急に脚本が完成しました。
完成した脚本は、今までのタランティーノ映画よりも洗練されていました。ただの映画オタクが喜ぶ映画ではなく、一般の映画ファンでも受け入れられるメジャーなストーリーラインでした。勿論タランティーノ節は随所に埋め込まれていますが、第二次世界大戦のパリを舞台に見事な戦争映画として描かれていたのです。

<第3章:制作>
タランティーノから連絡を受けたプロデューサーのローレンス・ベンダーは、脚本完成から4日後、この作品をどうしていくか本人と話し合いました。タランティーノは、なんとかして2009年5月のカンヌ映画祭に間に合わせたいと切望します。1年に満たない時間でこの脚本を映画として完成させるのがいかに困難かは、素人でもわかります。しかし、タランティーノは引きません。そこで、急遽準備を始め14週間後には撮影を開始するというとんでもないスケジュールが組まれました。緊急で集められたメインスタッフは、まさに地獄の苦しみを味わうことになります。キャスティング、スタッフ集め、ロケハン....山のような仕事をこなしていきました。幸いにしてタランティーノは、どんな映画にするのか明確なビジョンがあったので、ロケ場所やキャスティングで悩むことはほとんどなかったようです。決めることはどんどん決めてくれたので、作業が停滞することはなかったのです。ローレンス・ベンダーは、契約と出資金集めに奔走しました。ラッキーなことにタランティーノ監督を長年応援しているワインスタイン兄弟が今回も支援してくれることになりました。しかし資金の確保と同様、予算の遂行、法的手続きは多忙を極めました。こうやって地獄の野郎どもは、タランティーノの為に文句も言わず撮影のセットアップを行っていったのです。

<第4章:キャスティング>
キャスティングは、タランティーノとしては既にイメージキャストが出来上がっていましたが、急な撮影だったため望んだ俳優が捕まらないこともありました。しかし、結果タランティーノらしい俳優が集結しました。
ブラッド・ピットは、実はスティーブン・スピルバーグ監督の新作「Money Ball」の撮影に入るはずでしたが、撮影が延期され「イングロリアス・バスターズ」の撮影に参加できました。この映画の場合主人公ではありませんが、彼は出演を快諾し南部なまりのバスターズを演じています。オーディションでなかなか決まらなかったのがナチの大佐ハンス・ランダ役でした。しかし、最終的にはドイツの俳優クリストフ・ヴァルツが決まります。今回の映画で一番の演技をしたのは彼です。とても素晴らしく今後映画祭ではほとんどの助演男優賞を受賞するのではないでしょうか。バスターズのひとりドニード役には、タランティーノとは何度も一緒に仕事をしているイーライ・ロスがキャスティングされました。ロスは「「キャビン・フィーバー」「ホステル」シリーズで有名ですね。さらにバスターズのヒューゴ役にはドイツ映画界の大御所ティル・シュヴァイガーがキャスティングされています。シュヴァイガーは97年のドイツ映画「ノッキング・オン・ヘブンズ・ドア」で人気となりました。この映画の日本版リメイクの際、日本に来れなかったのはこの映画が撮影中だったからです。あまり気づかないかもしれませんが、コメディアンのマイク・マイヤーズが将軍役で出演しているのも映画ファンを驚かせました。あの「オースティン・パワーズ」のマイク・マイヤーズ、地味すぎて驚きます。さらに日本人として嬉しいのがジュリー・ドレフュスの出演です。ナチ付フランス語通訳という地味な役ですが、90年代の日本で活躍していた女優さんだけに親近感がありますね。彼女は「キル・ビル Vol.1」にも出演していました。

<第5章:マニア向けな仕掛け>
メジャーなキャスティング、メジャーなストーリー、そして戦争映画という派手な仕掛けが合わさり、今までのタランティーノ映画とは一線を画した作品に仕上がった本作。でもタランティーノ節は生きています。映画を見てみると、山のように映画オタクねたがちりばめられていました。全てをここに記すことができないほど膨大な量ですが、その知識がなくても映画を楽しめるようになっています。ではいくつかトリビアを紹介します。
☆毎作品音楽に凝っていますが、「イングロリアス・バスターズ」もかなりがんばっています。印象に残るのはエンリオ・モリコーネの音楽です。実はモリコーネにサントラの依頼をしたそうですが、スケジュールがあわなかったそうです。そこでモリコーネが過去に作った音楽を多用しています。これによりなんともノスタルジックなヨーロッパ映画のような味わいが加味されています。
☆シュヴァイガー演じるバスターズのヒューゴ。名前をヒューゴ・スティグリッツといいます。この名前は実在するメキシコのB級映画俳優からとっています。
☆ナレーションは、タランティーノの親友であるサミュエル・L・ジャクソンです。
☆ストーリーの肝となる映画館のフィルム。昔のフィルムはとても燃えやすかったのです。なので、映写技師は免許制です。燃える原因はニトロセルロースという原料です。ちなみに現在の映画フィルムは合成樹脂なので燃えにくいです。フィルムが燃えるシーンは、「追想」のマネですね。

<第6章:完成、そして公開>
映画は、2009年のカンヌ映画祭に間に合うよう完成し、観客から賞賛されました。そしてアメリカでは8月21日に公開され、タランティーノ作品の中では過去最高の興行成績を樹立しました。日本では、ブラピ押しの宣伝でヒットしました。
タランティーノは、この作品でただの映画オタク向け作品ではなく、堂々としたメジャー作品を作ることのできる映画監督というレベルに引き上がったようです。でも、メジャースタジオの言うことを聞いて何でも撮る職業監督という意味では彼は不適合者でしょう。タランティーノ印をきちんと押した他の監督では作ることのできないメジャー作品を今後も作っていくのだと思います。そうなると、やはりプロデューサーは彼のことを熟知しているローレンス・ベンダー、そして出資と配給はワインスタイン兄弟ということになります。いつまでたってもタランティーノは、タランティーノなんです。


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13日の金曜日 (2009) [アメリカ映画(00s)]

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Friday the 13th (2009)

このタイトルで読むのをやめようと思った方、特に怖くもないですし、見ていなくてもこのシーリーズの概要が分かるので是非おつきあいください。

ちゃんと見たことはないのにタイトルだけは知っている映画シリーズ、それが皆さんにとっての「13日の金曜日」のイメージではないでしょうか。確かに11作品も作られたシリーズの後半はとてもひどい作品ばかりで、駄作という印象はこれら駄作からきています。しかし、本当に駄作だらけなら、これほどまで知名度があがることはなかったでしょう。今回は、このシリーズの概要と新しく生まれ変わった新作についてお話します。

オリジナル版「13日の金曜日」は1980年に製作され世界中で大成功しました。この経緯については過去の記事をご覧ください。

実はオリジナル版にはジェイソンは登場しません。メインキャラクターは子供(ジェイソン)を水難事故でなくした母親なのです。とてもよくできたサスペンス映画で、ホラーというよりはよくできた謎解き映画となっています。しかし、それだけでは地味だと考えたオリジナルの監督であるショーン・カニングハムは、ラストシーンで驚くべき1カットを追加しました。オリジナルで唯一ジェイソンが登場するシーンです。

映画はヒットしました。しかし続編を作る権利はワーナーブラザースからパラマウント・ピクチャーズに移行します。
そして、オリジナルのラストシーンをきっかけに実はジェイソンは生きていたという新しい設定が作られます。パート2以降では、そのジェイソンが大人になって母親の復讐を始めます。2では、ジェイソンは布の袋を被っていて、パート3でやっとホッケーマスクを手に入れます。そしてパート4(邦題:完結編)で遂に命をおとすのです。ここまでの4作品はストーリーも整っていて、オリジナルに比べるとホラー色が強くなっていますが、なかなかの出来映えです。

ジェイソンが死んでしまった後に製作されたのがパート5(邦題:新13日の金曜日)です。この作品は、番外編といった作りとなっていて、クリスタルレイクにジェイソンが復活したように見せかけた第3者による殺人事件を描いています。

映画として成立しているのは、ここまでです。それ以降の作品は、ジェイソンがお化けとなり、何度も生き返り意味もなく人を殺していくのです。こうして「13日の金曜日」は人々から駄作扱いされるようになっていったのです。

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オリジナルから25年。時代は変わり、「13日の金曜日」シリーズも製作されなくなりました。そんな時、「13日の金曜日」の続編の制作権を持つニューライン・シネマのトビー・エマリッチが「テキサス・チェーンソー」シリーズのリメイクを手がけたプラチナム・デューンズ・プロダクションに企画を持ち込んだのが本作の始まりです。その後、数年をかけて過去のシリーズの著作権を保有するパラマウント・ピクチャーズとクリスタルレイク・エンターテイメント(ショーン・カニングハムの経営する会社)との権利をクリアにしました。パラマウント社は、権利を渡す代わりに配給を申し出てきました。そしてニューライン、プラチナム、パラマウントでストーリーが練られていきました。この時点で映画はオリジナル(ワーナーブラザース)をリメイクするのではなく、オリジナルの後に続くストーリーを作ることになりました。

そんな時、このチームに新たな登場人物が出現します。マイケル・ベイです。マイケル・ベイは監督として「アルマゲドン」や「トランスフォーマー」シリーズでビッグネームとなりました。彼は自身の会社でホラーレーベルを立ち上げていました。今まで「悪魔のいけにえ」シリーズ、「悪魔の住む家」、「ヒッチャー」のリメイクを手がけており、すばらしいリメイクで映画ファンに評価されてきました。
そんな彼をこの企画に入れることが映画のヒットに繋がるとベイと一緒に仕事をしてきたプラチナムのプロデューサーは考えたのでした。

結果、完成したのはなかなかユニークなストーリーでした。2009年版はオリジナルのリメイクではなくパート2〜5のリメイクとなったのでした。厳密に言うとパート2と3からおおくの要素を取り入れているのです。ですから、時系列的にはオリジナルの次にくるストーリーとなります。オープニングでオリジナル(ジェイソンの母親の話)が語られます。この映像は過去の映像を使い回さず、新たに撮影されています。そして20年後のクリスタルレイクに舞台は移行します。そこで、大人になったジェイソンが、クリスタルレイクにやってくる若者を襲うのです。

監督は、ミュージックビデオ出身のマーカス・ニスペルを起用します。非常に美しい映像にイメージのついていない若手俳優が登場し、オープニングはまるでミュージックビデオかCMのようです。これは、「テキサス・チャーンソー」シリーズと共通したイメージです。よくある粗悪品の続編ではないことがわかります。そして、そこから始まるストーリーは、オリジナル版「13日の金曜日」の正統な続編としての作品です。

この映画の見所は2つあります。ひとつは美しい撮影と照明です。オリジナル版もそうでしたがアモレンズを使った美しい絵作りを堪能できます。アモレンズでしか撮影できない光のフレアが効果的に使われています。もうひとつは、オープニング・シークエンスです。オリジナル版をリメイクしています。このシーンだけでも見る価値があると思います(勿論オリジナル版を見ている人に限ります)。

映画は、アメリカ公開直後に2つの記録を樹立しました。シリーズを通して、初日の興行収入がNo.1であったこと、そして週末の収入としては過去の全てのホラー映画の中で一番おおきかったのです。リメイク版「13日の金曜日」は、このように大ヒットし、世界的に大当たりしました。ご存知の通り、日本では全くやる気のない配給会社のおかげで公開されたことすら知らない方がおおいのではないでしょうか。

ホラー映画の続編=粗悪品というイメージは私も含め長年の定説になりつつありました。しかし、ベイを含むプラチナム・デューンズのプロデューサー陣は、見事にこの問題を払拭し、過去の財産に新たな息吹を吹きこむことに成功しています。このチームは、シリーズの記念すべき13作目となる続編の準備をすすめています。

そして嬉しいことに、新たな有名ホラー映画シリーズのリメイクに着手しています。それは傑作「エルム街の悪夢」です。

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告発のとき [アメリカ映画(00s)]

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In the Valley of Elah (2007)

ポール・ハギス。彼は、脚本家としてテレビ業界に入りいくつかのテレビドラマや映画のプロットライターとして活躍していました。彼の企画は一貫したテーマ性の強いもので、興行的な大ヒットや高視聴率を獲得するといった派手な結果は残しませんでしたが、各作品ともにとても力強く見た人からは肯定的な意見がおおい作家でもありました。

ハギスが世界に注目されるようになったのは、2004年に公開された「ミリオンダラー・ベイビー」からです。ハギス脚本、クリント・イーストウッド監督の重いテーマの映画は最優秀作品賞を含む4つのアカデミー賞を受賞します。2005年には、ハギス自身が監督、脚本も担当した「クラッシュ」がアカデミー最優秀作品賞を受賞します。彼は2年連続でテーマ性の強い映画でオスカーを手にすることになりました。

その後も、イーストウッド作品「父親たちの星条旗」「硫黄島からの手紙」の脚本を担当したり、007シリーズのリニューアル版「カジノ・ロワイヤル」「慰めの報酬」の脚本に参加しました。

地味な作品ですが確実にテーマのある作品を自分なりに作り続けてきたハギスは、このように注目され次回作が待たれる人物になったのです。
そのハギスが次に考えた監督作が「告発のとき」です。

この映画は実際に起こった事件をもとに脚色しています。
2003年、イラク戦争から帰還したある若い軍人リチャード・デイビスが失踪します。そして帰国したジョージア州で彼の遺体が発見されました。元軍警察に勤務していた父親ラニー・デイビスは、自らジョージア州に赴き息子の死の真相をつきとめていきます。この事件を追った書籍は「Murder in Baker Company: How Four American Soldiers Killed One Of Their Own」というタイトルでアメリカで発売されています。CBSテレビの「48 hours」でも取り上げられました。
ハギスは2004年にこの事件に迫ったプレイボーイの記事で初めて事件をしりました。そして、丁寧に事件を検証し、映画のストーリーを構築していきました。

企画当初、主役のハンク・デアフィールド(ラニー・デイビスがモデル)には、クリント・イーストウッドがキャスティングされていました。クリント・イーストウッドが主役をやるということでこの企画にグリーンライトが灯り、サミットやワーナー・インディペンデントが出資を決めます。しかし、イーストウッドは役者としてキャリアを築くつもりがないという理由で降板してしまいます。そこで新たに主役探しが始まり最終的にトミー・リー・ジョーンズがキャスティングされました。一緒に事件を追う刑事役エミリーにはシャーリーズ・セロンが決まりました。彼女がこの映画を支えていると言っていいくらい素晴らしい演技を見せています。セロンのキャリアの中でも一番彼女が光っている作品です。妻役には、スーザン・サランドンがいい味で出演しています。

この映画、面白いのは、同時期に同じ撮影場所(アルバカーキ)で撮影された「ノーカントリー」とキャストやスタッフが被っているということです。撮影はロジャー・ディーケンズ、出演者ではトミー・リー・ジョーンズ、ジョッシュ・ブローリン、バリー・コルビン、キャシー・ラムキンが両作に出演しています。

映画は、ハギスらしい強いテーマ性を持ったすばらしい作品に仕上がっています。子供を亡くした父親の苦悩、元軍人らしいもの静かでしっかりした行動など細かな描写が見事で、地味なストーリーにも関わらず見始めるとグイグイとスクリーンに引き込まれてしまいます。

この作品、アカデミー賞主演男優賞を含む数々の映画賞にノミネートされましたが、ベニス映画祭以外は受賞を逃してしまいました。

ハギスの次回監督作は2011年公開予定の「The Next Three Days」です。主役はラッセル・クロウ。殺人事件の容疑者になってしまった新婚の妻を巡るサスペンスだそうです。

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告発のとき

オリジナル・サウンドトラック「告発のとき」

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アメリカを売った男 [アメリカ映画(00s)]

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Breach (2007)


皆さんは、ロバート・ハンセンという人物をご存じですか?
ハンセンは、アメリカFBIのロシア担当エージョントでした。アメリカきってのロシア通であり、アメリカにとって国防のために重要な人物です。
この映画は、ハンセンにまつわる1997年に起こった事件を事実に忠実に追いかけたとても面白いスパイドラマです。
スパイものというと、007シリーズやボーン・シリーズのように派手なアクション映画を想像しますが、実は本物のスパイはもっと地味に活動しています。しかし扱う情報は国家の存亡がかかわる重要なもので、アクション映画よりもっどダイナミックです。

主人公は、ハンセンではなく彼のアシスタントを務めるエリック・オニールという若者です。彼は、情報収集係でしたがいずれはFBIのエージェントになるという夢を持っていました。そんな彼がFBI本部に引っ張られ変人として有名だったハンセンのアシスタントに着任するところからドラマが始まります。
オニールは、変人だと思っていたハンセンがとても良い人柄で、心神深く家族思いであることを知ります。しかし、FBIの内部調査チームは、ハンセンの身辺整理を行っているのです。FBI本部からは、ハンセンのアシスタントとハンセンの身辺調査を行うよう指示されオニールは混乱します 。
物語は、一気に緊迫していきます。実はハンソンには、アメリカの情報をロシア側に売った疑いがあるのです。オニールの知らないところで50人もの捜査チームが組織されFBIは、オニールの裏切りの事実を暴いていきます。オニールも活躍し遂にハンセンはロシア側とコンタクトするところを見つかり捕らえられてしまいます。

アメリカの情報は、相当数ロシア側に流れていてハンソンの情報により数十名のFBI捜査官が命の危機にさらされ少なくとも2名はKGBにより殺されています。ハンソンによる犯罪は、過去のアメリカの歴史で最も大きな反逆罪として当時大きなニュースになったので記憶にある人もいるのではないでしょうか。

映画は、アメリカでは有名な事件をただ追いかけるだけではなく、実際にアシスタントとしてハンソンの逮捕に尽力したオニールの視点で、アメリカ・FBIの問題点、FBI職員の苦悩、宗教など様々な問題を浮き彫りにしながら、面白いストーリーに仕立て上げられています。

原題のBreachとは、情報が漏洩するという意味。制作はアウトロー・プロダクションが行っています。 アウトローは、事件が起こった91年、そして場所をリサーチしてまるでドキュメンタリーのように事実に忠実に映像化しています。撮影はタク・フジモト。「羊たちの沈黙」のジョナサン・デミや「シックス・センス」のシャマラン監督の作品を撮影した日系人です。

ハンセン役には、私の大好きなクリス・クーパー。彼が見事な演技を披露しています。オニール役には、若手のライアン・フィリップが抜擢、彼はこれから有名になるでしょう。

世界的には40億円の興業成績をあげたのですが、日本では、配給会社のやる気のない宣伝とシャンテ・シネ系での小規模公開だったため、ほとんど誰にも知られず公開が終了しました。
さらに日本では原題表記されておらず、DVDには「Agent Double」という変なタイトルが記載されています。当然DVDも売れませんでした。

ハンソンは、現在、終身刑で刑務所に入っています。オニールはFBIを辞め弁護士として活躍しています。
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トランスフォーマー [アメリカ映画(00s)]

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Transformers (2007)

タラカトミーが80年代に開発したおもちゃ「トランスフォーマー」。このおもちゃはHasbro社によってアメリカで発売され、「トランスフォーマー」というアニメによって爆発的にヒットしました。1986年にはアニメ映画が公開され子供達は興奮して映画を見て玩具を買いました。
そんな、日本初の子供のおもちゃが150億円もかけてハリウッド映画化されるというニュースを聞いたとき、本気でやるのかとほとんどの人が疑問を持ちました。

今回はそんな無謀な企画を成功に導いた人たちのお話です。

30代の若いプロデューサーであるドン・マーフィーは、2000年代初頭「G.I.ジョー」の実写映画化を模索していました。権利を持つHasbro社と一緒に企画を開発していたとき、不運な出来事が起こってしまいます。アメリカ軍がイラク攻撃を開始し、映画への撮影協力ができなくなってしまいました。そんなときHasbro社はマーフィーに「トランスフォーマー」の映画化について提案してきました。マーフィーは「トランスフォーマー」の映画化に関し動き出します。すると「トランスフォーマー」の熱狂的なファンであるトム・デサントが参加したいと手を挙げてきました。彼はブライアン・シンガーと組んで「Xメン」シリーズをヒットさせた人物です。若い二人は、アニメ版や漫画版の「トランスフォーマー」を作ってきたスタッフと何度も会い、ストーリーを考えました。その結果、アニメに登場するロボット達が映画版にも登場すること、映画のトーンはリアリティのあるもので子供っぽい作風にはしないことなど最終的に映画に反映されることになるいくつかの重要な決めごとを作りました。

「トランスフォーマー」の大ファンであったスティーブン・スピルバーグが2004年にプロジェクトに参加します。スピルバーグはエクゼクティブ・プロデューサーというポジションです。要は自身の経営する映画スタジオ・ドリームワークスが資金を拠出するということです。スピルバーグの参加により企画は一気に動き出しました。そして当初、言葉を発しなかったロボット達は話すように変更されました。戦いの場はグランドキャニオン、映画のスケールはどんどん大きくなっていったのです。

2005年6月、スピルバーグはマイケル・ベイに監督の依頼をしました。「アルマゲドン」「バッド・ボーイズ」などで知られるベイは、子供っぽい映画だと言うことでこの依頼を断ります。しかし、スピルバーグと仕事をしたいという思いとHasbro社の熱心なスタッフを見て心を動かされます。それでもベイにとって脚本はとても幼稚だったので、ベイなりに本を書き直すことを条件にこのプロジェクトに参加することにしました。これにより子供っぽい映画になる可能性をはらんだ企画が、ベイの力により見事にハリウッド・アクション大作として制作されようとしていました。

脚本ができあがり、予算を算出すると、とてつもない金額となりました。そこでベイは、報酬の30%をカットし、その分を制作費に回しました。映画の見所はトラックや車がトランスフォームし巨大ロボットになるシークエンスです。これにはCGIが使われることになりました。2005年4月からソフトウェアの開発、アニマティクスがスタートしていました。新しい映像をクリエイトするのはジョージ・ルーカスが率いるILM。残りをデジタル・ドメインが担当しました。6ヶ月かけてILMが作り上げた変形シーンは、T2のリキッドメタルのようでした。ベイはこれを好きになれず、もっとガチガチと鉄のブロックが変形するようなイメージで作り直して欲しいと依頼します。日本人を含むチームがソフトウェアを開発し、ベイの期待に応えます。ロボットの数が増え、変形に要するアニメーターやスタッフの増員でILMは規模を大きくして作業に対応しました。

撮影はロサンゼルス周辺で進められました。撮影期間は83日。オーストラリア、カナダなどにも出向き撮影を行い撮影は順調に進みました。皮肉なことにストーリーには軍隊が大きく関与します。結局、アメリカ軍がいくつかの基地を撮影に貸してくれました。撮影は、ロボットがいないというだけで爆発やアクションなどはほぼ実際に撮影されました。週末のロサンゼルスダウンタウンは、ブロックが封鎖され激しい爆破シーンが何度も収録されました。沢山のカメラ、沢山のスタッフキャストを動かし、事故の内容に撮影を終了するという監督本来の指揮統率能力を持っている映画監督が現在何人いるでしょうか?スティーブン・スピルバーグ、ジェームス・キャメロン、トニー・スコットくらいではないでしょうか。マイケル・ベイはその中のひとりです。ある時は頑固に、ある時は強力なリーダーシップを示し撮影する姿は、この映画の成功を信じているとしか映らなかったでしょう。

映画の宣伝は、派手に行われました。登場するロボット達がアニメ版と一緒であること、声優までもが同じであることから、子供の頃見ていた世代に向けてのパブリシティが始まりました。同時に、映画版のおもちゃが大量に製造され、子供達の人気となりました。マイケル・ベイは、パナソニック、バーガーキング、ペプシのタイアップCMを制作します。CM業界出身のベイならではのかっこいいCMです。
驚いたことに試写を見た映画評論家の評価がおおむね好評だったことです。映画は、ドリームワークスとパラマウント・ピクチャーズの共同配給で世界公開されました。子供っぽさを排除し大人が見ても満足できるストーリー、ILM主導の素晴らしいCGI、マイケル・ベイの演出、沢山のスタッフの努力により映画は大ヒットします。2007年の世界で一番稼いだ映画となり、その金額は700億円を超えました。

ベイは、この映画で約10億円の成功報酬を受け取ることになりました。撮影時に映画のクオリティを上げるため自分の報酬を30%カットしましたが、それをはるかに上回る収入を得たのです。ベイは、この収入を会社の買収に投資します。CGIを手伝ってきたデジタル・ドメイン社を買収してしまったのです。このニュースに、映画業界は驚きました。ベイは、映画産業に投資するような人物ではないと思われていたのですが、自分の利益を映画業界の発展のために投資してしまったこと、そしてその投資先が、ジェームス・キャメロンがかつて社長を務めた「ターミネーター」「タイタニック」を作り上げたデジタル・ドメインだということにです。

デジタル・ドメインは、すぐにベイから新しい仕事の依頼を受けます。それは「トランスフォーマー」の続編制作です。続編はさらに規模が大きくなります。そのCGI開発から制作を引き受けるのです。
そして完成したのが「トランスフォーマー リベンジ」です。内容は、1に比べると幼稚になっていますが、デジタル・ドメインによるCGIはとても素晴らしい出来映えでした。

現在、ベイは様々なプロジェクトで活躍しています。映画のプロデューサー、監督、俳優、CMディレクター、会社経営などです。映画監督としては「トランスフォーマー」の第3作目とかつての盟友ジェリー・ブラッカイマーとの新作が控えています。デジタル・ドメインは、この先どうなるのでしょう?「トランスフォーマー」で会社の価値を上げ会社を売って利益を上げる投資物件として終わるのか?ルーカスフィルムのように、大切に育てていくのか?今後のベイとデジタル・ドメインの動向に注目です。

企画当初からがんばっていたマーフィーとデサントは、「トランスフォーマー リベンジ」でもプロデューサーとして活躍しました。スピルバーグは無報酬で、「トランスフォーマー リベンジ」のエクゼクティブ・プロデューサーを務めました。

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チャーリー・ウィルソンズ・ウォー [アメリカ映画(00s)]

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Charlie Wilson's War(2007)

皆さんは、チャールズ・ネスビット・ウィルソンという人物をご存じですか?
通称チャーリー・ウィルソンは、アメリカの政治家ですが、ニュースに取り上げられることも少なくアメリカ国内でもそれほど知られていない地味な存在でした。

そんなチャーリー・ウィルソンが、実は陰で歴史に残る大仕事をしていたのです。ジョージ・クライルという作家が書いたノンフィクション小説が2003年にアメリカで発表され、一躍時の人となりました。その小説をベースに作られた映画が、今回紹介する「チャーリー・ウィルソンズ・ウォー」です。

民主党の下院議員としてテキサス州から出てきたチャーリー・ウィルソンは、3期を務めたのですが、特に目立った活躍はせず、議員としての経歴も特になにもありませんでした。事務所には美人ばかりを揃え、典型的なテキサスの田舎者議員の印象でした。そんな彼は、地元の有力者からの依頼でパキスタンを訪れます。1980年代後半は、旧ソ連がアフガニスタンに侵攻し、アフガニスタンで生活する普通の住人達を虐殺していました。それを逃れるため多数のアフガニスタン人は、国から逃げ出したのです。彼ら難民はパキスタンにも押し寄せていました。

チャーリー・ウィルソンは、難民の悲劇を目の当たりにして直ぐに活動を開始します。表では、アメリカとソ連は闘うことはしません。アメリカは裏で資金を武器に変え、アフガニスタン人たちに供給しようと考えたのです。チャーリー・ウィルソンは、CIAと協力し、議会を説得、資金を拠出します。そして、本来ならば敵対国の関係にあるイスラエル、エジプト、パキスタンを協力させ、武器をアフガニスタンに送るのです。

この裏での活動は当時全く知られていませんでした。もし発覚していたらアメリカとソ連の戦争に発展したかもしれません。この陰の活動は功を奏し、ソ連はアフガニスタンから撤退、その後、ソ連は崩壊してしまうのは皆さんもご存じのはずです。

こんな大それた政治活動を行うチャーリー・ウィルソンは、どんな人物なのでしょう。いくつかの文献によるとやはりテキサスの田舎者のイメージなのです。そんな彼がひとりで歴史を変える程の仕事をしたのでしょうか?実は彼の周りには沢山のブレインがいました。ブレイン達がチャーリーを支え、歴史に隠されたミッションを遂行したのです。

映画は、この実際にあった物語を描いています。映画でチャーリー・ウィルソンを演じるのはトム・ハンクス。彼は実物を研究して見事に田舎者を表現しています。周りの参謀にはフィリップ・シーモア・ホフマンやジュリア・ロバーツが参加、映画はとても素晴らしい作品に仕上がっています。

映画の最後にチャーリー・ウィルソンが実際に語った文章が出てきます。実はこの映画のメッセージはここに込められていると思いました。何故、この映画が作られたのか、それは歴史的に大きな意義があったのです。このメッセージは皆さん、映画をご覧になって実感してください。今、この時代に生きる者として、心にガツンとくるお話です。

映画は、アメリカではヒットし原作や実際に起こった事実を知らない米国国民にインパクトを与えました。そして第65回ゴールデン・グローブ賞では5部門、第80回アカデミー賞ではフィリップ・シーモア・ホフマンが助演男優賞にノミネートされました。


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ボーン・アルティメイタム [アメリカ映画(00s)]

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The Bourne Ultimatum(2007)

紆余曲折がありながらスマッシュ・ヒットとなった「ボーン・アイデンティティー」に続き、映画的な続編となった「ボーン・スプレマシー」までもが世界的にヒットした、ボーン・シリーズの第3作を紹介します。

「ボーン・アイデンティティ」ですら、ロバート・ラドラムの原作とはストーリーが変化してしまっていたので、第2作の「ボーン・スプレマシー」は、題名こそ同じですが、映画独自の進化を遂げてしまいました。その第3作ともなると、さらにストーリーは原作から離れてしまいます。この「ボーン・アルティメイタム」は、一応の原作であるラドラムの「最後の暗殺者(原題:The Bourne Ultimatum)」と同じ題名ですが、内容はかなり異なります。

原作を無視して映画的に新たなストーリーを構築し、失敗するケースがおおいのですが、この映画「ボーン・アルティメイタム」は非常に珍しく、映画もとても良くできています。もしかしたら原作を超えるかもしれません。何故、これほどまでに優れたストーリーを作ることが出来たのでしょう。それは、第1作から続く同じチームが再び集まって映画を作っていることに要因があります。

「ボーン・アイデンティティ」を作り上げたダグ・リーマンは、今回もエクゼクティブ・プロデューサーとして、作品全体を統括しています。映画ボーン・シリーズは、リーマンのイメージが映像化されたものです。よって、彼が旗を振る限りボーン・シリーズは安泰と言えるでしょう。監督は2作目からメガホンをとるポール・グリーングラスです。独特の演出が今回も素晴らしい効果をあげています。音楽は全作担当しているジョン・ポールです。そして制作は、長年スティーブン・スピルバーグを陰で支えてきたフランク・マーシャルの会社が行っています。マーシャルは、「ボーン・アイデンティティ」の時から、リーマンとユニバーサル・スタジオの間に入り潤滑油として作品の制作を支えてきました。出演者も変わることなくシリーズを通して同じメンバーです。

同じスタッフとキャストが続編を作るのは、当たり前のように思えますが、こういう例は稀です。ほとんどの映画では何かしらの問題が起こり、誰かがプロジェクトを去ったり呼ばれなかったりするのです。しかし、ボーン・シリーズは結束が固いようで、同じメンバーが三度集結しています。

映画は、ロンドンのパインウッド・スタジオを中心に撮影されました。ロケでは、世界各地を巡り、撮影は予定通り順調に進みました。今回の撮影では、2つのエンディングが撮影されました。そして試写によって1つのエンディングを採用し、別のエンディングはお蔵入りとなりました。

映画は、当然の大ヒットです。よく錬られた脚本に、素晴らしいアクション・シーンが融合し、世界的に高い評価を得ました。欧米では、おおくの賞を受賞し、沢山の映画賞にノミネートされ、そのうちいくつかは受賞しました。

こうなると、ユニバーサル・スタジオだけでなく、ファンも続編を望むようになります。しかし、ラドラムによる一応の原作はこの作品で尽きてしまいました。

主人公ジェイソン・ボーンを演じたマット・デイモンは、2007年のカンヌ映画祭でこの第3作がシリーズの最後と発言しました。デイモンが、The Daily Showという番組に出演した際、グリーングラス監督が次回作は「The Bourne Redundancy」(余分なボーン・シリーズ)だと発言したと語りました。それほど第4作が作られる可能性が低いということを表したエピソードです。

しかし、ユニバーサルは続編を制作することを決定しており、そのことを2007年後半に発表しました。この発表に関し、2008年3月、マット・デイモンとポール・グリーングラス監督は、いろいろな問題があってまだ契約をしていないと発言し、ファンは続編がどうなってしまうのか不安になりました。きっと、またユニバーサル・スタジオとリーマンの間に何らかの衝突があったのでしょう。リーマンは面白いストーリーをまず作り、それから第4作に取りかかりたかったのではないでしょうか。あるいは、正当な原作を書いたラドラムに敬意を払うため、勝手に4作目を作りたくなかったのでしょうか。


2008年6月には、ボーン・シリーズ第4作は、フランク・マーシャルがプロデューサーを務めジョージ・ノルフィが脚本を書くとユニバーサルから発表されました。このニュースは何を意味しているのでしょう。おそらくリーマンとユニバーサルの対立は深刻化しているのではないでしょうか。そして、キャストと監督は様々なオプション契約の解釈で揉めているのではないでしょうか。
結果、ダグ・リーマンは、このシリーズから外れ、マット・デイモンやグリーングラスも続編に携わりたくないのではないでしょうか。しかし弁護士の影響でデイモンとグリーングラスは、この新作に関わらなければならないようです。
最新情報によると、デイモンとグリーングラスは、続編にクレジットされています。

ロバート・ラドラムは、ボーン・シリーズを3作書いて亡くなっています。しかし、その後エリック・ヴァン・ラストベーダーという作家によってThe Bourne Legacy "The Bourne Betrayal"と"The Bourne Sanction"The Bourne Deception という続編が4作書かれています。

第4作が、「The Bourne Betrayal」となるのか、全くのオリジナルとなるのかは現時点では不明ですが、あの素晴らしいシリーズと同じクオリティの続編が作られるのか、「ターミネーター3」のような、他人が作った愛のない駄作になってしまうのか、ファンならずともとても気になるところです。
第4作は2010年公開予定です。

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ボーン・アイデンティティー (ユニバーサル・ザ・ベスト第8弾)

ボーン・スプレマシー

ボーン・アルティメイタム



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