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死霊のはらわた [アメリカ映画(10s)]

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Evil Dead(2013)

ホラー映画史の金字塔である「死霊のはらわた」。この邦題はなんとかしてもらいたいものですが、ホラー映画としてだけではなく芸術作品としても素晴らしい映画です。この映画が遂に2013年にリメイクされました。今回はこのリメイクに至るまでの出来事を記したいと思います。

オリジナル版についてはこのブログで既に紹介済みですので、詳しくはこちら(「死霊のはらわた」1981)をご覧ください。
この記事でも記していますが、「死霊のはらわた」リメイク版は2006年頃公開の予定でした。

1981年製作の「死霊のはらわた」オリジナル版は、世界的に大ヒットし、ビデオマーケットの拡大と共に大きな利益を上げました。これに目を付けたプロデューサーのディノ・デ・ラウレンティスが出資を申し出てパート2である「Evil Dead 2 Dead By Dawn」(邦題「死霊のはらわたII」)が制作され、さらに大ヒットしました。パート2は、オリジナルのリメイクともとれる作品で、予算に余裕が出た分クオリティがアップしているのと、ライミのコメディ要素が増していて楽しめるエンターテイメント作品に仕上がっています。反面、スプラッター的ホラー要素は減ってしまっています。このパート2も世界的に評判が良く、続いて続編となるパート3「Army of Darkness」(邦題「キャプテン・スーパーマーケット」)が制作されました。邦題は論じる必要がないほど適当に付けられ作品がかわいそうですが、映画自体は、主人公アッシュが戦うダークファンタジーとなりファンにも喜ばれる大作に仕上がっています。

「死霊のはらわた」3部作のヒットにより、サム・ライミ監督はメジャー監督としての道を歩んでいきます。1990年の「ダークマン」では、エンターテイメント映画に進出します。コメディとサスペンスを絡めた独特の演出が話題となりサム・ライミという名前も徐々に知られるようになっていきました。レオナルド・ディ・カプリオ主演の西部劇「クイック&デッド」も素晴らしく、「死霊のはらわた」のようなスリリングなカメラワークとダイナミックな演出が光っていました。
しばらくインディーズ系のスタジオとの仕事を続けてきましたが、メジャースタジオのひとつSONYが手がけた「スパイダーマン」(2002年)で大ブレイクします。今までの彼の作品で培ってきた演出方法と撮影技術をベースに大金を投入して作った作品ですが、ライミとしてはいつも通りに映画制作を続けて、その延長線上にたまたまあった作品です。彼にとっては大作であろうが低予算映画であろうが同じスタンスで作品に取り組んでいました。しかし「スパイダーマン」の大ヒットによりSONYは、続編のオプション契約を行使します。シリーズ物として3作目まで制作にGOサインが出たのです。この契約によりライミはしばらくの間、大作映画「スパイダーマン」に専念しなければならなくなりました。
彼が楽しみにしていた「死霊のはらわた」のリメイクという企画はしばらく凍結することになります。そしてより自由な映画作りが出来る小さい作品制作もできなくなりました。製作費100億円を越える映画作りはとても大変です。スタジオ・エクゼクティブが勝手な意見を監督に要求してきます。興業成績という大きなプレッシャーもありますし、キャストやスタッフへのケアも必要です。自分の意見はほとんど通らず、自分が望んでいないキャストが入ってきたり、納得のいかないCGを我慢しなければなりません。気軽に観客を楽しませる映画を作っていきたいライミは、「スパイダーマン」で葛藤します。
その後も「スパイダーマン」シリーズ自体は大ヒットを続けていきます。収入は増え、大金を手にしたライミは、そある決断を下します。彼自身のクリエイティブを優先するため、契約が切れる「スパイダーマン3」で監督を降板してしまいました。SONYとしてはパート4以降も制作をするつもりでしたが、ライミはより自分の作りたい映画作りに没頭したかったのでしょう。

「スパイダーマン3」の後は「死霊のはらわた」のリメイクを再始動させつつ2009年に「スペル」を製作し、公開しました。「スパイダーマン」シリーズでライミを知ったファンは、この映画を見て驚いたことでしょう。あまりに地味でダークな内容に。「スペル」は、ライミの元々持っている「死霊のはらわた」の世界に近いホラー映画でした。ライミは、「スパイダーマン」という呪縛から解き放たれ、自分が作りたい映画を作りました。今後はエンターテイメント大作を監督して資金を稼ぎながら、自身では自分が作りたい映画を制作し、時には監督し時にはプロデュース業にまわり若手の育成を行っていくようです。

「死霊のはらわた」は、元々ライミ自身が監督しリメイクするという案があったようです。「スパイダーマン」で忙しくなった以降、プロデューサーとしていくつかのホラー映画を成功させた経験から、若手監督に演出するという方向にシフトしました。ライミはオリジナル版の時から仕事をしているブルース・キャンベル(オリジナル版の主役アッシュ)とロブ・タパートの3人でプロデュース・チームを作ります。監督捜しが難航する中、プロデュース・チームはYOUTUBEで興味を引く短編を配信している若いチームを発見します。ウルグアイのフェデ・アルバレスです。広告業界で働いてきたアルバレスは、2009年に300ドルの予算で作った短編映画「Panic Attack !」をYOUTUBEで配信します。この映像が話題となり、それをライミ達が見て白羽の矢を当てたのでした。
アルバレスにアプローチしたプロデュース・チームは早速ミーティングに入りました。そして彼に「死霊のはらわた」のリメイクを任せることにしたのです。

インタビューによると、アルバレスはオリジナル版にそれほど興味を持っていなかったそうです。しかしミーティングを重ねするちにライミはプロデューサーとしてそれほど口を出さないことがわかり、自分たちがある程度自由に作品作りが出来るのではと思ったそうです。ライミは「スパイダーマン」で経験したことを活かし若手映像作家にクリエイティブ・フリーダムを与えたのでした。

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そして制作されたのが2013版「死霊のはらわた」です。
まずオリジナルのストーリーをベースに脚本に改変が加えられました。そしてライミが持っていたコミカルな演出はなくし、よりリアリティのある方向に演出をシフトすることになりました。キャストはオリジナルと同じように無名な俳優が登用されます。そしていよいよ撮影が始まりました。
結果、完成した作品は、オリジナルを離れアルバレスの新作のように仕上がっています。オリジナルへのオマージュはいくつか見られるもののオリジナル版のファンのおくはがっかりした出来映えです。特に、必要のない舞台となる山小屋の設定や、主役の麻薬更生プログラム、メインキャラクターが途中で交代する、謎の怪物など、オリジナルが素晴らしかっただけに、新たに付け加えられた要素が邪魔になってしまっています。
やはりライミとオリジナル版を尊敬する若手監督が演出すべきだったと思わざるを得ません。

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リメイク版は、アメリカで興行的に成功します。公開週の興業収入No.1になってしまったのです。これには2つの要素が含まれます。ひとつは誰もが知っている映画史に残る名作をリメイクしているということです。タイトルの知名度は抜群です。そしてオリジナルのファンが沢山います。オリジナルのアップデート版なら誰もが興味を引くでしょう。ふたつめは、オリジナル版を知らない若い映画ファンが飛びついたことです。激しいホラー描写に若者は驚き喜びました。そして彼らは「死霊のはらわた」を新しいと評価したのでした。

そして、この大成功を受けてふたつのプロジェクトが動き出しました。
2013年版「死霊のはらわた」の続編の制作とオリジナル版「死霊のはらわた」パート4の制作です。この2つのプロジェクトが実際に成立するかはまだわかりませんが、順調に進んだ場合、2013年リメイク版はアルバレス・チームが中心に動き、若い客がついて行くでしょう。オリジナル版のパート4はサム・ライミが中心として動き、オリジナルのファンが付いていくのではないでしょうか。どちらにも積極的に参加するのはブルース・キャンベルでしょう。

今後もこのフランチャイズがどう発展していくのか楽しみです。

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TaekoLovesParis

いつもながらのとてもわかりやすい文章で、ひきこまれます。タイトルが、どろどろした感じなので、見に行く気になれず、オリジナルをみていないんです。スパイダーマン、オズは見ました。死霊の、、パート4、見てみます。
by TaekoLovesParis (2013-05-11 22:41) 

coco030705

こんばんは。
映画の裏話ほどおもしろいものはありませんね。また記事を楽しみにしております。
by coco030705 (2013-05-11 22:48) 

non_0101

こんばんは。
リメイクはいろいろ難しい問題があるのですね。
2013年版は怖がりな私には予告編だけで逃げ出したくなったのですけど、
怖い映画が好きな人にはたまらない作品ですよね(^^ゞ
サム・ライミ監督が心行くまで満足できる新作が出来るといいなあと思います☆
by non_0101 (2013-05-12 19:02) 

DSilberling

Taekoさん、ご無沙汰しております。
この作品は無理して見なくても良いと思います(笑)
by DSilberling (2013-06-02 19:24) 

DSilberling

cocoさん、こんにちは。
もう少し頻繁に更新できるようにしますね!
by DSilberling (2013-06-02 19:25) 

DSilberling

nonさん、大作は作るのが大変で、名作になる可能性はとても低いんです。サム・ライミには今後も頑張って欲しいですね。
by DSilberling (2013-06-02 20:08) 

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