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グリーンゾーン [アメリカ映画(10s)]

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Green Zone (2010)

アメリカの起こしてしまった大失態を暴く問題作を紹介します。

世界的にベストセラーになっている「A Young People's History of the United States」という本をご存じでしょうか?日本では「学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史」というタイトルで翻訳版が発売されています。
この本には、今まで語られていなかったアナザー・サイドのアメリカ史が書かれています。というより今まで知られていたアメリカの歴史は嘘の歴史で、真実の歴史を初めて文章化した本だとも言えます。
その本の最後の章に映画「グリーンゾーン」が描く内容についての記載があります。

アメリカによる、2003年に行われた「イラクの自由作戦」のことです。このイラク戦争は、イラクに他国を脅かす大量破壊兵器が隠されているという確実な情報を元に行われた戦争でした。しかし、それより10年ほど前から国連は何度もイラクを視察していて、大量兵器は見つかっていませんでした。この戦争について、国連のスタッフや知識のあるマスメディアは、疑問を示しました。しかし、2001年の9.11テロによる感情的なアメリカ国民は、冷静さを失っており、ブッシュ大統領を全面的に支持し、本来は9.11テロとは全く関係のないイラクに侵攻していったのです。

当時、我々も大量破壊兵器がイラクにあるんだったら、直接9.11テロに関係なくてもイラクをたたいておいたほうが良いと思ったのです。日本のマスコミは自分たちでろくに取材もせず、ロイターやCNNからの情報を訳して放送しているだけなので、日本国民のおおくは、アメリカ国民と同じように国家の判断に従ったのでした。

しかし、この後とても恐ろしいことがわかりました。
大量兵器は存在しなかったのです。

この事実は、ひっそりと報道されました。なので、日本ではそれほど大騒ぎにはならなかったのですが、よく考えるととんでもないことです。近代史においてここまで国家が国民、いや全世界で生きている人々に対し間違いを伝えるという事件があったでしょうか?

さらに驚いたことに、大量破壊兵器が存在するという情報は、そもそもアメリカ政府がねつ造していたという可能性があるという事実が明るみに出てきたのです。
そう、イラク攻撃のためにアメリカ政府は世界中に嘘をついていたのです。

これによりイラクでは民間人数千人が命を落としました。精度の高いミサイルを使っているので、民間人の巻き添えは最小限ですというアメリカの発表も嘘で、バグダッドでは、家族が休暇宿泊していた観光ホテルが爆撃され、さらに爆撃機はそのホテルに戻ってきて攻撃を加えました。

この驚くべき事実は、はるか昔のお話ではなく、つい数年前に起こったのです。
平和ぼけ日本では、こんな世界史に刻まれるべき大問題はほとんど報道されず、おおくの日本人は知らないこととなっています。

前置きが長くなりましたが、映画「グリーンゾーン」のお話です。
監督のポール・グリーングラスは、アメリカが犯した「歴史上最大の嘘」を映画化したいと思っていました。映画という手法を使えば、この酷い出来事の真実を知らない人々にも事件を知らせることが出来るのではないか、と。ただし、ドキュメンタリーを作ってもそれほどおおくの観客は獲得できないですし、話題にもならないでしょう。グリーングラスは、ドラマ性のある映画で、真実を伝えたかったのです。

取材を始めるとワシントン・ポスト紙の元バグダッド支局長、ラジブ・チャンドラセカラが書いた「グリーンゾーン」という本に出会いました。グリーングラスは、この本をベースに映画を制作することを決意し、さらに取材を進めていきました。
ご存じの通り、グリーングラスはイギリス人で元ドキュメンタリー映画の制作者です。彼は取材は得意で精力的に動きます。映画の重要なファクターはストーリーテリングです。事象が羅列されるのではなく、登場人物に感情移入できて、メインキャラクターがドラマ的な展開を行わなくてはなりません。グリーングラスは主人公となるべきモデルを探します。そして遂にモンティ・ゴンザレスという軍人をみつけます。ゴンザレスの任務は、イラクで大量破壊兵器が存在すると思われる場所を捜索することでした。しかし、いくら探しても兵器は見つからないのです。そしてだんだん何かがおかしいと思い始めます。

ゴンザレスの体験は、グリーングラスも私たちも疑似体験できます。
イラクに大量破壊兵器がある→なんとか排除しなければ行けない=世界平和を願う→兵器がないぞ?=疑問&混乱
映画は、その真相を暴いていくのです。

グリーングラスは、「ボーンス・プレマシー」と「ボーン・アルティメイタム」で一緒に仕事をしたマット・デイモンに声をかけます。デイモンこそが主人公を演じられる役者だと監督は確信していたのです。デイモンは、直ぐにこの企画にサインをします。そして映画化が具体化していきます。制作出資はボーン・シリーズと同じ会社です。配給も同じです。制作過程では、メンバーが同じなのでボーン・シリーズの第4作目が作られていると思われていましたが、実は全く違う映画でした。

グリーングラスは、「ユナイテッド93」、ボーン・シリーズで確立したリアリズムを徹底するため、プリプロダクションを綿密に行い、まるでイラクの最前線基地にいるような映像を作り出しました。勿論イラクで撮影しているわけではなく、スペイン、モロッコ、イギリスで撮影され、CGによってイラクを作り出しています。
そして遂に「グリンゾーン」は、リアリティのある戦争サスペンス映画として完成します。映画としてとても高いレベルで完成した素晴らしい作品となりました。

結果、マット・デイモン主演の戦争アクション映画にみえるこの映画は「アメリカの大嘘」に興味のない映画ファンを取り込むのに成功します。

「グリーンゾーン」とは、イラクにおける安全地帯という意味です。でも、この映画を見終わると我々はグリーンゾーンにいる嘘をついたアメリカに荷担していることに気づくでしょう。そして、そういう自分に驚き考えを改めなければいけないと思うかもしれません。

ただのアクション映画だと思っていると、それ以上深い深いテーマが刻み込まれているグリーングラスらしい映画です。

<映画を面白くするお勧めの本、DVD>
学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史〈上〉1492~1901年

学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史〈下〉1901~2006年

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コメント 18

coco030705

こんばんは。
グリーングラスとマット・デイモンは勇気のある人たちですね。
この事実は知っていましたが、この映画を見たら、単にブッシュだけが
悪いのでもなく、アメリカ国民全体ひいては日本にもその責任があるということがわかるのでしょうね。いつか観てみたいと思います。

by coco030705 (2010-05-22 23:52) 

nomame

これは観たいと思っていました。
貴重な記事を参考にして、しっかり鑑賞してきたいと思います。
by nomame (2010-05-24 13:23) 

non_0101

こんばんは。
数年前のこういう事実が、これだけ大きな作品として映画化されることが
凄いなあと思いながら観ていました。
改めて怖さを感じる作品でした☆
by non_0101 (2010-05-29 00:03) 

さーやん

ご来訪有難う御座います
by さーやん (2010-06-08 06:01) 

SilverMac

読んでみたい本ですね。
by SilverMac (2010-06-08 06:31) 

perseus

おはようございます。
ご来訪&niceありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。
by perseus (2010-06-08 10:44) 

Kimball

おお!!
これは興味深い本をご紹介頂き、ありがとうございました!!
是非読んでみたいです!
映画のほうもDVDで観てみます!!
by Kimball (2010-06-09 09:22) 

オヤジ

こんにちは、初めまして。
イラクとの関連性がない9.11を絡めて無理矢理攻め入ったアメリカの責任を国際社会はもっと積極的に追求しないといけないと思います。
アフガンも本当の侵攻の理由は何なのかはっきりしません。
日本人はもっと自分の脳味噌で考える必要があると思います。
by オヤジ (2010-06-09 11:01) 

duke

戦後アメリカは国際社会を仕切ってきましたが、政治的にも経済的にも自国の利益の為のウソと詐欺だらけだと思います。
アカデミックな世界で批判的な説は認められないので、公にはならないけど、少し勉強すればボロボロ出てきますよね☆ もっと正論として語られるべきだと思います。そのためにはアメリカ以外の国が国力を持たないと☆

グリーンゾーンはまだ見ていないので、早く見たいと思います^^
そして、本、読みます^^
by duke (2010-06-13 18:14) 

DSilberling

cocoさん、こんにちは。
こういう作品も今のタイミングで見ると、後で見るよりも違って見えると思います。是非ご覧下さい。
by DSilberling (2010-06-16 00:16) 

DSilberling

nomameさん、こんにちは。
自分が日本のマスコミに惑わされて間違った判断をしないためにも必見ですよ。
by DSilberling (2010-06-16 00:17) 

DSilberling

nonさん、こんにちは。
このスピードの速さに感心させられます。本当に製作チームは勇気がありますし感心させられますね。
by DSilberling (2010-06-16 00:17) 

DSilberling

さーやんさん、SilverMacさん、perseusさん、コメントありがとうございます。
by DSilberling (2010-06-16 00:18) 

DSilberling

Kimballさん、こんにちは。
「学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史」は、とても面白いですよ。
by DSilberling (2010-06-16 00:19) 

DSilberling

オヤジさん、こんにちは。
そのとおりですね。我々も間接的に罪亡き人を殺しているんです。
とても悲しいですね。
by DSilberling (2010-06-16 00:20) 

DSilberling

dukeさん、こんにちは。
こういう事実から目を背けてはいけないですね。
by DSilberling (2010-06-16 00:21) 

piccolo

おひさしぶりです。

原作「グリーン・ゾーン」やこの映画の存在が、
唯一救いになるような、
恐るべき曲げられた歴史ですね。
わが国も追随した=戦争に加担したと言っても
過言ではないと思っています。

”本当のアメリカの歴史”の著者の一人、ハワード・ジン氏と
M.デイモンは交流があったようです。
残念ながら今年1月に亡くなりましたね。

TBさせて頂いても宜しいですか?
by piccolo (2010-06-21 23:41) 

DSilberling

piccoloさん、こんにちは。
勿論。TBしてください。
by DSilberling (2010-07-09 18:14) 

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