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ボーン・アイデンティティー [アメリカ映画(00s)]

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The Bourne Identity (2002)

作家ロバート・ラドラムが書いた「ジェイソン・ボーン」3部作の第1作である「暗殺者(原題:The Bourne Identity)」(1980)をマット・デイモン主演で映像化したヒット作の裏側を紹介します。

劇場を運営していたロバート・ラドラムは、作家に転身する決意をし、1970年に「スカーラッチ家の遺産(原題:The Scaelatti Inheritance)」でデビューを果たします。それまで順風満帆だった人生を捨て去り作家になろうとしたラドラムは、どのような心境だったのでしょう。家族は路頭に迷うのではないかと不安になりましたが、もともと俳優をしたり劇場を営んだりしてお客さんを楽しませることが得意だった彼は、次々とヒット作を書き上げていきました。彼の書いた小説は現在までに世界で2億冊以上が売れています。

ラドラムの作品の中に「ジェイソン・ボーン」3部作というものがあります。記憶を失った男「ジェイソン・ボーン」の戦いを描くスパイアクションです。1作目は「暗殺者(原題:The Bourne Identity)」(1980)、2作目は「殺戮のオデッセイ(The Bourne Supremacy)」(1986)、3作目は「最後の暗殺者(The Bourne Ultimatum)」(1989)。このシリーズは、世界中でおおくのファンに愛されています。ラドラム死後は、別の作家によりさらに2作のシリーズ続編が書かれています。

映画監督のダグ・リーマンは、「スウィンガーズ」(1996)監督後、高校生の頃から好きだったジェイソン・ボーン・シリーズの映画化に着手しました。映像化権を持っていたワーナーブラザースと交渉し、権利を確保した後、脚本家のトニー・ギルロイと一緒に2年を費やし脚本を完成させます。リーマンは、ギルロイに原作を読まないよう頼み、リーマンがストーリーを口頭で伝え、脚本を膨らませていきました。そしてユニバーサル・スタジオ資金を拠出し撮影が開始されることになりました。公開予定は2001年9月から2002年6月の間に設定されました。
しかし、リーマンとユニバーサルの間にはおおくの問題が発生し始めました。まず、スタジオの介入を好まないリーマンは、スタジオの要求を拒否し続けました。これによりスタジオと監督の間に溝ができてしまいました。映画の内容はオリジナリティに富んでおり野心的なものでしたが、スタジオ側は小規模なアクションシーンばかりで大作には見えなかったこと、撮影が世界中に展開し制作費がかかることについても不満で、互いの理解が一致しませんでした。そんなことが続き撮影が延期されたため、制作費は当初の5200万ドルから800万ドルも増え600万ドル(約60億円)になってしまいました。公開時期も延期され悪夢がさらに長引きました。撮影終了後のポストプロダクション中に原作者のラドラムが死去してしまうという不幸もありました。
キャスティングに関して、リーマンは、ラッセル・クロウやシルベスタ・スタローンなどを考えました。この映画はアクション・シーンが重要なので、アクション経験のある俳優を捜していたのです。特にブラット・ピットに関しては具体的な交渉に入りましたが「スパイ・ゲーム」の撮影と重なり、この話はなくなりました。結果は、アクション経験のないマット・デイモンで決着します。デイモンは、主人公ジェイソン・ボーンを演じるためアクションの訓練を続け、殆どの撮影は自身で演じています。

結局映画はなんとか完成し、2002年6月にユニバーサルピクチャーズにより全米公開されます。映画の困難な制作過程とは異なり、評判は大変良く興業は成功となりました。2億ドル以上の興業収入をあげ、世界中に「ジェイソン・ボーン」が知れ渡ったのです。

この「ボーン・アイデンティティー」の制作における出来事はハリウッドでも日本の映画界でもよく起こる現象です。資金を拠出している会社の担当者が作品の中身を理解せず口を出すことはよくあります。そして、作品を実際に作る監督とクリエイティブ面に関しぶつかり、問題が勃発するのです。おおくの作品は、ここで制作が中止されるか、完成してもつまらない映画になってしまうのです。
リーマンは、この困難に妥協することなく突き進みました。そして自分の作りたかった作品を作り出しています。
スタジオが思いこんでいた「派手なアクション」がなくても十分に面白い映画ができることを本作は証明しています。そして制作費が超過しても、それ以上の利益を上げることもできたのです。

評価も良くて、利益も上がった作品が世に出ると、スタジオは急に態度を変えます。「手のひら返し」を堂々とやってのけるのです。ユニバーサルは、直ぐに続編の映画化について検討をはじめます。

そして、続編にあたる「ボーン・スプレマシー」の制作が決定、脚本開発が始まりました。
スタジオと揉めたリーマンは、この次回作を引き続き監督するのでしょうか?この続きは、次回「ボーン・スプレマシー」の回でお伝えします。

<「ジェイソン・ボーン」3部作を購入>
ボーン・アイデンティティー (ユニバーサル・ザ・ベスト第8弾)

ボーン・スプレマシー

ボーン・アルティメイタム


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コメント 40

nomame

nice! ありがとうございました。
あれだけの大ヒット作「ジェイソン・ボーン」3部作も
多難なスタートだったんですね。
DSilberling さんの記事で作品の思い出が鮮やかに蘇ってきます。
ずうずうしいですけど、続きを楽しみにしています。
by nomame (2008-10-11 22:46) 

TaekoLovesParis

「グッドウィルハンティング」や「リプリー」で、頭のいい若者という印象が強いマット・デイモンだったけれど、この映画で、アクションもできるぞ、と演技の幅を広げたのでしたね。友達がマサチューセッツのケンブリッジにいるのですが、いつもマットのことを、「ケンブリッジの出身でハーバードに行った」と自慢しています。

ジェイソン・ボーンのシリーズがこんなにヒットすると思われていなかったとは、予想外でした。いつもSilberlingさんの内幕記事はおもしろいです。
by TaekoLovesParis (2008-10-11 23:00) 

non_0101

こんにちは。
なるほど「派手なアクション」がポイントだったのですね!
でも、小規模なアクションシーンだったからこそ、リアリティがあって
観ていてドキドキする作品になっていたのだと思います。
マット・デイモンもとても頑張っていましたよね。
大ヒットして本当に良かったです☆
by non_0101 (2008-10-12 11:16) 

DSilberling

nomame さん、こんにちは。
次回をお楽しみに!
by DSilberling (2008-10-12 12:11) 

DSilberling

Taekoさん、こんにちは。デイモンは、アカデミー脚本賞を受賞している才人なんです。ケンブリッジの方にとっては誇りでしょう。
次回をお楽しみに!
by DSilberling (2008-10-12 12:12) 

DSilberling

nonさん、こんにちは。
会社のトップは、どうしてもマーケティング至上主義となり、作品の持ち味やカラーを無視してしまいます。
見る方も、宣伝だけでなく作品をしっかり見る目を持たなければなりませんね。
by DSilberling (2008-10-12 12:14) 

しまうま

 はじめまして。nice!ありがとうございます。

 なるほど~。そんな舞台裏があったんですか。私はジェイソン・ボーンのシリーズで一番好きなのは、やっぱりアクションですね。車が衝突しただけで爆発したり、普通に走ってる状態では宙を舞ったりしない(絶対ありえないとも言い切れませんが)というのは、素人でも分かる感覚です。でも、それでも全然地味じゃないし、すごく緊迫感のある見せ方に毎回なってる。

 特に3作目でCIA(だったかな?)にマークされてるジャーナリストを誘導して駅で尾行をまこうとするシーンは爆発もマシンガンの連射もないけど、息するの忘れるほどでした。映画会社のエライさんって、ホントは観客のことなめてるんじゃないですかね。本当におもしろいものはヒットするのに。
by しまうま (2008-10-12 13:22) 

ふじくろ

そうなんですか、そんな面白そうな映画とは知りませんでした。
スタジオはもうちょっとでこの作品をダメにしてしまうところだったのですね。
監督ががんばってくれてよかった!
by ふじくろ (2008-10-12 19:54) 

かおり

この作品が公開された当時
「マット・デイモンがアクション映画に?」と
少なからず驚いた覚えがあります
結果的にマットは、周りの期待以上の答えを出せたんですよね♡
とても好きな役者なんです^^
by かおり (2008-10-12 22:20) 

バラサ☆バラサ

ポール・グリーングラス、大好きな監督です。
ボーン・アルティメイタムはアクション映画史上に残る大傑作だと思います。
その後のダグ・リーマンの状況を鑑みると、変わったのは大正解だと思いますが、何故に監督が変わったのか?つづきが楽しみです。
by バラサ☆バラサ (2008-10-13 03:35) 

てくてく

紆余曲折があったのですね~。
いつも楽しく観ている側なので、
そういう苦労を聞くと、
やはり映画製作の現場って大変なんですね^^
マット・デイモンの起用は結果、大成功でしたね!
by てくてく (2008-10-13 08:27) 

rosemary

この映画面白かったです。大好きです。
こんな色々が、できあがるまでにはあったんですね。
興味深い記事をありがとうございます。
by rosemary (2008-10-14 10:11) 

syu

こんにちは。ご来訪ありがとうございました
映画製作の裏側まで詳しく書かれていて驚きました。
また伺せて頂きます^^

by syu (2008-10-14 12:38) 

虹子

先日はご訪問&nice!ありがとうございました。
舞台裏、とても興味深く読みました。
私のような素人は、作品の出来を
ついつい監督や俳優のせいにばかりしますが
良い作品を作るにはスタジオの姿勢がいかに大事か
改めてよくわかりました。続きも楽しみです。
by 虹子 (2008-10-14 22:01) 

naonao

この作品はマット・デイモンの代表作ですね。
2作目のみ大きなスクリーンで見たのですが、スピード感あってストーリー展開も面白くてすごくいい作品だと思いました。
マット・デイモンのほかにもたくさんの役者が候補にあがっていたなんて面白いです。
でもこの作品はマット・デイモンがやって良かったように思います。はまってる気がします。
by naonao (2008-10-16 21:56) 

ももね

はじめまして!こんばんわ!
ショボいブログなのに、nice&ご訪問ありがとうございました!!

ボーン・アイデンティティシリーズは大好きなシリーズですが、
いろんな事情があって、完成した映画だったんですね。
映画を観る時、私はどうしても感情が先にきてしまうタイプなので
とても興味深く、記事を読ませて頂きました。
また伺わせて頂きます★

by ももね (2008-10-17 20:17) 

パキちゃん

こんばんは^^ おじゃま致します。
当方のブログにご訪問頂きましてありがとうございました。
nice! 嬉しかったです (*^^*)
私は3部作のうち、ボーン・アルティメイタムのみを映画館で観たのですが、
DVDで見るよりもマット・デイモンが素敵に感じました。
裏話を知ると、また違った観点から楽しめそうですネ!
また遊びに参ります。
by パキちゃん (2008-10-18 21:39) 

satoco

公開当時日本での宣伝も実に地味で、でも評論家や見た人がみんなして「地味だけど面白い」って言ってたのを覚えています。
脚本は面白そうなのにスターを出せとか派手な演出をしろとか映画会社が注文をつけるというのは「ザ・プレイヤー」を地で行ってますね。スタローン主演で派手なアクション満載映画だったら凡作だったでしょうね。
by satoco (2008-10-18 23:55) 

SAKANAKANE

ヒット作の裏話、面白いですね。
続きが気になります。
by SAKANAKANE (2008-10-19 02:20) 

gamelove

はじめまして。
ブログ、ゲームが好きです。のgameloveと申します。
ウチのブログにnice、ありがとうございました!
とても興味深い記事がたくさんありますね。
また、寄らせていただきます。
by gamelove (2008-10-22 15:51) 

花火師

 復帰しました!
またよろしくです
by 花火師 (2008-11-02 02:39) 

thaler

続編、楽しみですね。
by thaler (2008-11-02 19:29) 

DSilberling

しまうまさん、こんにちは。
映画会社のトップは、現場経験がないので数字で企画を考えてしまいます。作品は情熱で作られるのですが、それを理解できる人は少ないのです。こういう上司って日本企業にも結構いますね(笑)。
by DSilberling (2008-11-03 07:20) 

DSilberling

ふじくろさん、こんにちは。
我々映画ファンも、こういう素晴らしい映画をきちんと評価しないといけませんね。というよりも劇場できちんとお金を払うべきですねー。
by DSilberling (2008-11-03 07:21) 

DSilberling

かおりさん、こんにちは。
デイモンは、このシリーズで大きく変わりましたね。
今後の彼の活躍が楽しみですね。
by DSilberling (2008-11-03 07:22) 

DSilberling

バラサ☆バラサさん、こんにちは。
監督交代劇の裏側、わかりましたか?
by DSilberling (2008-11-03 07:22) 

DSilberling

てくてくさん、こんにちは。
デイモンは結果良かったですが、映画がこけていたら批判されていたかもしれません。
俳優にとって作品選びはとても重要なんですよ。
by DSilberling (2008-11-03 07:23) 

DSilberling

rosemaryさん、こんにちは。
次回もお楽しみに!
by DSilberling (2008-11-03 07:24) 

DSilberling

syuさん、これからもよろしくお願いします。
by DSilberling (2008-11-03 07:24) 

DSilberling

虹子さん、こんにちは。
映画の裏側は、表とはかなり違いますよ。
他の作品も読んでみてくださいね。
by DSilberling (2008-11-03 07:25) 

DSilberling

naonaoさん、こんにちは。
デイモンは、4作目にも出演意欲があります。
きっと2010年あたりにボーンの新作が公開されますよ。
by DSilberling (2008-11-03 07:26) 

DSilberling

ももねさん、こんにちは。
映画は純粋に見るものですが、こういう裏側を知るとより楽しめるのではないでしょうか。
by DSilberling (2008-11-03 07:27) 

DSilberling

パキちゃんさん、こんにちは。
映画はやはり映画館で見るべきです。
映画制作者は、ビデオで見るようには作っていませんから(笑)
by DSilberling (2008-11-03 07:28) 

DSilberling

satocoさん、こんにちは。
下手な役者が人気だけで主演する邦画とは違い、作品をきちんと作るために集まるキャスト&スタッフ。こういう映画が日本でも増えて欲しいものですね。
by DSilberling (2008-11-03 07:30) 

DSilberling

SAKANAKANEさん、こんにちは。
続きはいかがでしたか?
by DSilberling (2008-11-03 07:30) 

DSilberling

gameloveさん、こんにちは。
これからもよろしくお願いします。
by DSilberling (2008-11-03 07:31) 

DSilberling

花火師さん、おかえりさない。
by DSilberling (2008-11-03 07:31) 

DSilberling

thalerさん、こんにちは。
続編、2010年公開です。
by DSilberling (2008-11-03 07:32) 

Kimball

なは。
意味わかんないままに\(^o^)/今日まで、
「Born Identity」だとおもっていました。<おいおい

主人公の名前だったのですねえ...
UnixのB-ShellのBourneさんの
「ボーン」と一緒ですね?た、たぶん...\(^o^)/
-----------
いやあ、毎度、DSilberlingさんの「舞台裏秘話」を
楽しみに読ませていただいています。
ありがとうございます!!
by Kimball (2008-11-03 15:54) 

サダー

なんか今までにないダークな画とスピード感がとても印象的でした。
サスペンスとしても面白かったし。
あえて文句つけるとすればマリーがついていった動機がまだ弱いと思えたところくらい。

マットデイモンでよかったですねきっと。
ラッセルクロウだと変に華麗になっちゃいそう。
by サダー (2008-11-05 01:23) 

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