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第84回アカデミー賞 授賞式 [映画賞・映画祭]

今年もアカデミー賞が行われ各賞が発表されました。
このサイトでは、受賞作ではなく、アカデミー賞自体を詳しく紹介し、映画の楽しみ方や今までとは違った見方を提供していきたいと思っております。
執筆には時間がかかると思いますが、今暫くお待ちください。
尚、今年度私の尊敬する方が3人亡くなっており、追悼コーナーで紹介されたので、そのことだけ触れておきます。
Tak Miyagishima
日系人で第二次大戦時には日系人収容所に入れられていたのにも関わらず、戦後すぐにカメラの製作所に就職し、様々なカメラやレンズを開発しました。そして、宮城島さんの作ったカメラは「風とともに去りぬ」などの映画を撮影する際に使われたのです。彼こそが今のPanavisonの基礎を作り上げた人です。
私はロサンゼルスのあるパナビジョンを訪れた際、既に引退されている宮城島さんが日本人が来るという事でわざわざ所内をご本人が案内してくれるという機会に恵まれました。本来パナビジョンのカメラやレンズは全てレンタルで内部がどうなっているのかを知る事はできないのですが、宮城島さんは私をどんどん案内し、普段は一般人が入る事のできないエリアまで連れて行ってくださいました。
あのPANAVISIONのロゴも宮城島さんがご自身で作ったものだそうです。
英語と日本語を交えながら熱心に映画とカメラについて話す宮城島さんは、とても元気だったのでまたお会いできると思っていました。とても寂しいです。
Ben Gazzara
有名な俳優なので名前を聞いた事がある方もおおいと思います。
映画監督のジョン・カサベテスの作品に常連としてよく出ていました。「バッファロー66」「ビッグ・リボウスキー」「トーマス・クラウン・アフェアー」などに出演していました。
私は、彼と低予算映画でご一緒させていただきました。彼はギャラよりも若手の作品に出演し、新しい才能を開花させたいという思いで出演を承諾してくれました。ニューヨークで撮影されたその作品はかなりの低予算映画でしたが、彼は手を抜く事無く一生懸命参加していたのを覚えています。トレーラーハウスなども用意できない貧乏所帯に文句一つ言わず、若いスタッフとコミュニケーションをとる姿には感心させられました。良い俳優がまたひとりいなくなってしまいました。
Steve Jobs
もはやここで説明する必要も無い人物です。彼がAppleIIを発売した頃、まだ小学生だった私はとても興奮しました。ついに使えるPCが発明された!と。そしてマッキントッシュがデビューし、欲しくて仕方がありませんでした。初めて手に入れたPCはIIci。かなり高価でしたが、マウスにカラーモニター、そしてHDDが80MB付いている最新鋭機でした。
スティーブがアップルを追われた後もAppleとNextを思い続け、何度もジョブスのガレージやクパチーノに足を運びました。
Appleとも関わりを持ち続け、スティーブに憧れ続けたこの20数年。やはり彼の功績は凄いなあと思います。
サイレント、モノクロ映画が最優秀作品賞に決まり、今年は映画だけでなくテクノロジーの転換点となったアカデミー賞。この授賞式の歴史的背景や裏側にも迫りたいと思います。
更新をお楽しみに!
第83回アカデミー賞 授賞式 2/3 [映画賞・映画祭]

The 83 Annual Academy Awards
前回に続き、2011年3月に行われたアカデミー賞の授賞式を紹介します。
今年は、地味にはじまった授賞式ですが、これからどんな展開があるのでしょう。
音響部門のプレゼンターは、スカーレット・ヨハンソンとマシュー・マコノヒーです。
ジェームス・フランコは、彼ら二人をケビン・ベーコンの友達みたいに、友達の友達の友達と紹介しました。ご存知の方もいると思いますが、俳優のケビン・ベーコンは交際範囲が広く、彼を中心にするとほとんどのセレブが友達の輪になるというウェブサイトがあります。その話をしているのです。残念ながらWOWOWでは、翻訳されていませんでした。

録音賞:Sound Mixing
まずは録音賞から。ノミネートは、『インセプション』、『英国王のスピーチ』、『ソルト』、『ソーシャル・ネットワーク』、『トゥルー・グリット』でした。サウンド・ミックスという仕事は多岐にわたる地味な作業の積み重ねです。そういった意味で言うと『インセプション』が圧倒的な時間をかけて制作されているはずです。
受賞は、当然『インセプション』のローラ・ハーシュバーグ、ゲーリー・リゾ、エド・ノヴィックでした。彼らはスタッフ、特にワーナーブラザースのポストプロダクションにお礼をしていました。ワーナーブラザースの音響スタジオは昨年大幅にリニューアルされ、スカイウォーカーサウンドを凌ぐような素晴らしい音響スタジオが沢山できました。『インセプション』もここで制作されたのです。ちなみにこのワーナーブラザースのスタジオのスタッフは、東京にある東宝スタジオ内ポストプロダクション・スタジオの設立にも技術供与しました。

音響効果賞:Sound Editing
音響効果は、録音された台詞や音楽、効果音などを整理して観客が劇場で聞く音響にするまでの行程を担当する人たちの賞です。ノミネートは、『インセプション』、『トイ・ストーリー3』、『トロン:レガシー』、『トゥルー・グリット』、『アンストッパブル』でした。
個人的には、『トロン:レガシー』が素晴らしかったと思います。そして私と旧知の仲であるトムが担当した『トイ・ストーリー3』にも愛着があります。
受賞は、『インセプション』のリチャード・キングでした。確かにあの重厚な音響を仕上げるのは大変だったでしょう。クリストファー・ノーラン監督と新ワーナーブラザース・スタジオは、今後、沢山の名作を生むことになるんだと思います。

科学技術賞:Scientific Technical Awards
プレゼンターは、マリッサ・トメイです。
「アカデミー賞が初めて開催された2年後の1931年観客を圧倒させる映像を作るエンジニアが初めて賞を与えられました。その賞は現在も続いていて、今年も科学技術賞が発表されました。」
ここからはステージ上のスクリーンに映像が映し出され科学技術賞が紹介されました。
アニメーション制作に使われるバウンスライト技術
役者の表情をキャプチャーしてアニメのキャラクターを作り出す技術
重いものを簡単に動かすことのできるサーボウィンチ
進歩し続けるスパイダーカムやケーブルカム
これらの技術者に11の賞が贈られました。
毎年、科学技術賞は、事前に行われ、そのダイジェストがアカデミー賞で流されます。実は私たちが映画館で驚かされる映像は、地味なエンジニア達が開発したハードやソフトが無ければ実現しないのです。そういった意味でも彼らを賞賛しきちんと賞を授与するアカデミー賞は立派です。
バウンスライトは、『シュレック』はじめCGアニメにはかかせない技術です。表情をキャプチャーする技術がなければ『アバター』の映像制作はできませんでした。このように毎年新しい技術が生まれ作品の内容と相互作用を起こし傑作が世に送られているのです。
キャサリン・ペップバーンからボブ・ディランまで演じたケイト・ブランシェットの登場です。彼女はメイクアップ賞と衣裳デザイン賞のプレゼンターです。
「オスカー受賞作『ロード・オブ・ザ・リング 王の帰還』はメイクアップ賞と衣装デザイン賞も受賞しました。作品は私たち観客を魔法の国へと導いてくれました。

メイクアップ賞:Makeup
ノミネートは、『Barney's Version』、『The Way Back』、『ウルフマン』でした。
受賞は『ウルフマン』のリック・ベイカーとデイブ・エルシーでした。リック・ベイカーは『狼男アメリカン』や、マイケル・ジャクソンの『スリラー』で一世を風靡したメイキャップ・アーティストです。最近はCGで作られてしまう怪物が増えてしまったおかげでクレジットを見かけなくなっていましたが、久しぶりに『ウルフマン』で彼の名前を発見し嬉しく思っていました。ベイカーは年をとっていましたが痩せて若々しく見えました。エルシーは、長年モンスター映画を作り続けるユニバーサル・スタジオにお礼を言っていました。さすがです。

衣裳デザイン賞:Costume Design
ノミネートは、『アリス・イン・ワンダーランド』、『I Am Love』、『英国王のスピーチ』、『テンペスト』、『トゥルー・グリット』でした。
この賞は、どうしても時代物やファンタジーといったわかりやすい作品ばかりがノミネートされますが、実は現代を舞台にした映画にも衣装デザイナーがいます。次回は是非"普通の"映画もノミネートしてほしいです。
受賞は、『アリス・イン・ワンダーランド』のコリーン・アトウッドでした。彼女はこの部門の常連で今までに9回もノミネートされ『シカゴ』『サユリ』で受賞、今回で3回目の受賞となります。
映像が流れました。街で一般の人に好きな映画音楽についてインタビューしています。『8 maile』の歌が好きだ! 『ダーティ・ダンシング』の音楽に憧れた 病気の父親に母親が『タイタニック』の主題歌をよく歌っていたのを思い出す….
そんな一般の人のインタビューに混じってオバマ大統領が答えます。「数ある名曲の中でも As Time Goes By がすきです。そして『カサブランカ』の映像が流れます。
◇◇歌曲賞◇◇
プレゼンターはケビン・スペイシー。スペイシーはフレッド・アステアの素敵な歌を歌いだします。それはちょっときざでメロディアスな曲でした。「こんばんは、ジョージ・クルーニーです。」会場は爆笑でした。
このあと、歌曲賞にノミネートされた2曲のパフォーマンスが行われました。
まずは『トイ・ストーリー3』から「We Belong Together」。歌うのは、もちろんランディー・ニューマン本人です。
次は『塔の上のラプンツェル』から「I See the Light」。マンディ・ムーア、ザッカリー・リーバイ、アラン・メンケンが気持ちよく歌い上げました。
エイミー・アダムスとジェイク・ギレンホールの登場です。彼らは短編部門の担当です。
アダムス「長いタイトルの短編映画でデビューした監督がたくさんいます。ジョージ・ルーカスは『エレクトロニック・ラビリンス / THX1138 4EB』
ギレンホール「短編映画は予想しにくい部門です。たった1票で結果がかわることもあります。なので慎重に作品を選びましょう。」

短編ドキュメンタリー賞:Short Documentary
ノミネートは、『Killing in the Name』、『Poster Girl』、『Strangers No More』、『Sun Come Up』、『The Warriors of Qiugang』でした。
受賞は、『Strangers No More』のカレン・グッドマンとカーク・サイモンでした。グッドマンは移民や難民の子供達に謝意を、そしてサイモンはHBOにお礼を言いました。
ドキュメンタリーは儲からないので予算が集まりません。しかしこの作品のように制作することでおおくの子供達が救われることもあります。そういった作品に制作費を拠出するHBOは、素晴らしい会社だと思います。

短編実写映画賞:Short Live Action
ノミネートは、『The Confession』、『The Crush』、『God of Love』、『Na Wewe』、『Wish 143』でした。
受賞は『God of Love』のルーク・マセニーでした。マセニーはボサボサの髪をした背の高い青年でした。舞台に上がった彼は「皆さん、こんにちは。あー、髪を切っておけば良かった。」と言い会場は大爆笑となりました。「短編はiTUNESでも見られるので是非見てください。」
個人的には私の大学の後輩が受賞でき、こんな面白いキャラの監督でとても嬉しかったです。
ジェームス・フランコとアン・ハサウェイが久しぶりに話しだしました。
フランコ「今年はミュージカル映画の年でした。」
ハサウェイ「ミュージカル映画なんてあった?」
フランコ「みてみな」
映像が流れ出します。
『ハリー・ポッター』の映像を加工して出演者達が歌っているように見えます。そして『トイストーリー3』のウッディーも歌いだします。『ソーシャル・ネットワーク』の出演者はfacebookの歌をうたうのです。
この映像、加工にかなりの時間をかけていますが、内容はとてもつまらなくて驚きました。今までアカデミー賞は格式があり、流れる映像も品があって面白かったのですが、今年の映像はセンスが悪く、すべてうまくかみ合っていません。会場も映像が流れ終わった後シーンとしてしまいました。

長編ドキュメンタリー賞:Documentary Feature
オプラ・ウィンフリーの登場です。
「長年のオスカーを通じわかったことがあります。人は辛いときや悲しいとき何をしますか? We go to the Movies. でも、これから発表するのは観客に逃避をさせない映画です。素晴らしい長編ドキュメンタリー映画賞です。」
ノミネートは、『Exit Through the Gift Shop』、『ガスランド ~アメリカ 水汚染の実態~』、『Inside Job』、『レストレポ アフガニスタンで戦う兵士たちの記録』、『ヴィック・ムニーズ ごみアートの奇跡』でした。
受賞は、『Inside Job』のチャールズ・ファーガソンとオードリー・マーズです。「まずは言わせてください。大規模な不正を発端とする金融危機から3年、企業幹部は今も自由の身です。これは間違っています。」(拍手)「ここでは映画の話をしましょう。このような賞をいただきとても幸せです。」
アン・ハサウェイがひとりで登壇しました。「次のスペシャル・ゲストは歴代司会者のひとり。ビリー・クリスタル!」
皆がスタンディング・オベーションです。今まで司会者が不安定で、あまり登場しなかったので、ビリー・クリスタルがでてくると急にアカデミー賞らしくなりました。やはり、彼のような芸達者が司会をしないとアカデミー賞らしくないなあと痛感しました。
クリスタル「どこまで進んだっけ?この授賞式はいつも時間が足りなくなるんです。では最終作品賞です。」会場は笑い声に包まれました。
凄すぎです。いままでの2時間弱は、とても単調で締まらない進行でした。それがクリスタル登場で空気が一変し、昨年までの心躍るショーになっていくのです。
「アカデミー賞の初放映は1953年、私が5歳のときでした。つまり私は47歳です。当時の司会はボブ・ホープ。彼は司会を18回つとめました。私は2回目で疲れ、8回目で自慢してしまいました。ボブはアカデミー賞の代名詞。彼は面白くしっかりとしていて司会者としての資質があります。本物のセクシーな映画スターです。」「ヒュー(・ジャックマン)聞いてる?」「子供の頃、映画スタになりたかったというより、私はボブみたいになりたかったのです。だからカリフォルニアに引っ越して土地まで買いました。」「ボブとはここで行われたアカデミー賞授賞式でこんなことがありました。当時私が司会でボブはケビン(・スペイシー)と緊張している人が座っているあのあたりにいました。ボブが客席で見ていると思うと緊張しましたが、私は面白い冗談を言って受けたときにボブをじっと見てしまいました。ボブは私に拍手を送り手もふってくれましたが、カメラがボブを移さなくなった直後、中指をたてたんです。最高に笑えるでしょ。それがボブ・ホープなんです。」「テレビで見るボブはとても素晴らしかった。会場で実際に彼の司会を見ることができたらどれほど素晴らしかったでしょう。」
第25回アカデミー賞授賞式の映像(白黒)が流れました。若きボブ・ホープは、舞台の上にいるように投影され見事なスピーチを披露しました。
その映像は巧みに加工されていました。ボブはこう言い出します。「次のプレゼンターはロバート・ダウニー・Jr.とジュード・ロウです。」
ロバート・ダウニー・Jr.とジュード・ロウが登場しました。彼らは視覚効果賞と編集賞のプレゼンターです。
ロウ「最先端技術を駆使した大作を作るスタッフを紹介します。」
ダウニー・Jr.「僕らが逆さまで6時間も宙づりになっている間、調整が必要だと独り言を言っている人たちだよ。」
ロウ「落ち着いて。彼らの努力が
ダウニー・Jr.「トイレに行きたいのに、顔に60カ所マークをつけさせてくれと止めるんだよ。あいつらは。」
ロウ「この後のパーティであなたはチャーミングだったわとか言われたいだけでそんなこというんだろ。」「彼らなしでは君のスーパーヒーロー経験は2001年に安いホテルでバッドガールの衣装を着た女と捕まって終わりだったはずだよ。」(会場は失笑)
ダウニー・Jr.「あの部屋はコープレーとディスカウントで1泊1250ドル。それに2001年ではなく2000年だよ!そして異種はワンダーウーマンだよ!」「このような細部のこだわりがアカデミー賞投票者の支持を得ているんだ。」
この掛け合いは面白かったです。アイアンマンを演じたダウニー・Jr.は、優秀な俳優であり名コメディアンでした。

視覚効果賞: Visual Effects
ノミネートは、『アリス・イン・ワンダーランド』、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』、『ヒア アフター』、『インセプション』、『アイアンマン2』でした。
受賞は『インセプション』のポール・フランクリン、クリス・コーブルト、アンドリュー・ロックリー、ピーター・ベブです。「まだあのコマが回り続けている気がします、でも気にしない」というコメントが素敵でした。
ノミネート作品で唯一CGを極力排除した撮影はとても大掛かりでした。ほとんどのアクションは実際にセットがたてられスタントマンが演じています。最近流行のCGIでの視覚効果はリアリティがないのですが、『インセプション』は、本当に迫力がありました。

編集賞:Editing
ノミネート作品は、『ブラック・スワン』、『ザ・ファイター』、『英国王のスピーチ』、『127時間』、『ソーシャル・ネットワーク』でした。
受賞は、『ソーシャル・ネットワーク』のアンガス・ウォールとカーク・バクスターです。二人は『ベンジャミン・バトン』でもノミネートされていましたが、今回が初受賞です。
◇◇歌曲賞◇◇
プレゼンターとしてジェニファー・ハドソンが登場しました。ハドソンはすっかり痩せていて驚きました。彼女は母親を亡くし苦労していたのですが、明るくプレゼンターを務めていました。
このあと、歌曲賞にノミネートされた2曲のパフォーマンスが行われました。既に2曲の紹介が終わっているので、この2曲ですべてのノミネート曲が披露されることになります。
3曲目は『127時間』から「If I Rise」。歌はフローレンス・ウェルチとA.R.ラフマーンでした。
4曲目は『Country Strong』から「Coming Home」。グウィネス・パルトロウが歌手として登場しました。会場はやっと盛り上がってきました。

歌曲賞:Best Song
ノミネート曲は、「We Belong Together」(『トイ・ストーリー3』)、「I See the Light」(『塔の上のラプンツェル』)、「If I Rise」(『127時間』)、「Coming Home」(『Country Strong』(原題))でした。
受賞は、ランディ・ニューマンの「We Belong Together」でした。ニューマンは今までに20回もアカデミー賞にノミネートされているそうです。そして今回で受賞は2回目です。
ニューマン「メモを見ながら大勢の人の名前を読み上げるのは見苦しいと言われました。私のスタイルでもないです。ただ今回は仕方が無いのです。ピクサーで6本仕事をしてきて、今回はリー・アンクリッチやミッチェル・フルームとも仕事をしました。本当は感謝なんてしたくないんです。だってテレビでこんなことするのは見苦しいでしょ?授賞式ではいつもスピーチが長くなるんです。何故、歌曲賞は4曲なんでしょう?撮影賞は5作ノミネートされています。あと1曲くらいあるでしょ。とにかく受賞を感謝します。ありがとう」
ニューマンらしい面白く、結果、長いスピーチでした。
◇◇追悼:In Memoriam
セリーヌ・ディオンが「Smile」という歌を披露しながら、この1年で亡くなったハリウッド人を讃えました。
ジョン・バリー(作曲家)、グラント・マッキュイン(VFX)、トニー・カーティス、エドワード・リマト(エージェント)、トム・マンキーウィッツ(脚本家)、グロリア・スチュワート、ウィリアム・フレイカー(撮影監督)、ジョゼフ・ストリック(監督)、ライオネル・ジェフリーズ、サリー・メンケ(編集)、ロニー・チェイセン(パブリシスト)、レスリー・ニールセン、ロバート・ラドニッツ(プロデューサー)、クロード・シャブロル(監督)、ピート・ポスルスウェイト、ビル・リトルジョン(アニメーター)、ピエール・ギュフロワ(美術監督)、パトリシア・ニール、ジョージ・ヒッケンルーパー(監督)、アーヴィング・ラヴェッチ(脚本家)、ロバート・カルプ、ボブ・ボイル(美術監督)、マリオ・モニチェリ(監督)、リン・レッドグレーヴ、エリオット・カストナー(プロデューサー)、デデ・アレン(編集)、ピーター・イエーツ(プロデューサー/監督)、アン・フランシス、アーサー・ペン(プロデューサー/監督)、テオーニ・アルドレッジ(衣装デザイナー)、スザンナ・ヨーク、ロナルド・ニーム(監督)、デビッド・ウォルパー(プロデューサー)、ジル・クレイバーグ、アラン・ヒューム(撮影監督)、アービン・カーシュナー(監督)、デニス・ホッパー、ディノ・デ・ラウレンティス(プロデューサー)、ブレイク・エドワーズ(脚本/監督)、ケビン・マッカーシー、
◇◇追悼・レナ・ホーン◇◇
ハリー・ベリーが登場しました。
「レナ・ホーンは、我々にとって先駆者です。1943年にMGMと契約し、大手スタジオと長期契約した初めての黒人歌手でした。しかし当時ハリウッドは先駆者に優しい場所ではありませんでした。レナは、公私ともに大変な道を歩みましたが、ガッツと品位と美しさでストームを乗り越えました。彼女のおかげで私たちは「陽のあたる場所」にいるのです。ありがとうレナ・ホーン。あなたを決して忘れません。
静かに、アカデミーの会場に、レナ・ホーンが歌う白黒の映像が流れました。
そして…
It's not the load that breaks you down,
It's the way you carry it.
- Lena Horne
というメッセージが映し出されました。
「人は荷の重みではつぶれない。すべては抱え方次第」
この言葉、素晴らしいですね。
今年も私たちを映画の世界で楽しませてくれた映画人が亡くなってしまいました。とても悲しいです。特にいつも私を笑わせてくれたレスリー・ニールセンや「スターウォーズ」で映画の楽しみを教えてくれたアービン・カーシュナー、俳優の奥深さを教えられたデニス・ホッパー、悪名高いディノ・デ・ラウレンティスは、個人的に残念でなりません。
さて、次回の最終回は、メインの賞をお伝えします。今年はなんとなく寂しい舞台進行ではありますが、ノミネートされた作品は素晴らしいものばかりです。どんな作品が受賞し、どんなスピーチが聴けるのか、お楽しみに!
第83回アカデミー賞 授賞式 1/3 [映画賞・映画祭]

The 83 Annual Academy Awards
今年もアカデミー賞を詳しく解説していきましょう。テレビで中継を見た方、結果だけ知っている方もおおいと思いますが、ここではテレビや結果だけでは分からないアカデミー賞の魅力や裏側を紹介していきます。
今年の話題は、作品賞のどれもが主人公の成長を描いた映画だということです。昨年までと異なり、作品としては地味なものが集まりましたが、どの作品もクオリティは高くどの作品が受賞してもおかしくないという点では面白い賞レースが期待できました。
アカデミー賞のセレモニー自体は、今年から趣向を変え、若い俳優を司会にすえ視聴率のアップを目指しました。しかし、結果は大失敗で視聴率は昨年から大きくポイントダウンしてしまいました。
そんな第83回アカデミー賞を追いかけていきましょう。
オープニング
今年ノミネートされている作品の名場面集が上映されました。かっこいい編集で若者を意識しているのが感じられます。これらの映画を見ている方は、いよいよアカデミー賞が始まるとワクワクしたはずです。日本では未公開の作品もおおく日本人に取ってはちょっとわかりにくかったかもしれません。
ライブは、コダックシアターの天井付近にあるクレーンカメラの長いショットで始まりました。舞台の上には大きなスクリーンが設置されています。そこで、アカデミー賞ならではの映像が流れました。
「インセプション」のパリのカフェ映像に今回のアカデミー賞司会者であるジェームス・フランコとアン・ハサウェイが合成されています。アン・ハサウェイがレオナルド・ディカプリオに質問します。「アレック・ボールドウィンの夢に入り込み、司会の仕方を教わる方法は?」するとディカプリオはまじめに答えるのです。フランコが「そんなこと、どうやって証明するんだ?」と聞くと、パリの街が大爆破。
シーンが変わって、「インセプション」のボーイング747のコンパートメント。そこにもフランコとハサウェイが座っています。ディカプリオが睡眠導入剤を渡す相手は、なんとアレック・ボールドウィン!ボールドウィンが話しだします。「アン、司会のこつは・・」そこで寝てしまうボールドウィン。そして皆、睡眠状態に。
そこからは、様々な映画の中にジェームス・フランコとアン・ハサウェイが登場していきます。
「ソーシャル・ネットワーク」の世界に入りザッカーバーグと話すふたり。「司会に協力して下さい。」ザッカーバーグは「嫌だ!」と答えます。ジェームス・フランコは、「2人のフェースブック会員を失ったな」と返すのです。
「ザ・ファイター」のボクシングジムに登場するふたり。「ボールドウィンさんを見かけなかった?」「知らないよ」ジェームス・フランコとアン・ハサウェイは「私たち二人じゃ、司会は無理ですかねえ?」と聞くと、マーク・ウォルバーグたちと口論に。
次は「トゥルー・グリッド」の雪のシーンへ。アン・ハサウェイは熊のぬいぐるみを背負いジェフ・ブリッジスと対峙します。よく見ると熊のぬいぐるみは着ぐるみで、その中にはジェームス・フランコが!フランコはブリッジスに話しかけます。「トロンは最高だったよ!」と。「この作品も!」ブリッジスは「ありがとう」と答えます。
シーンはまた変わりエレベーターの中。そこに乗り合わせているのはモーガン・フリーマン。アレックの要望で落ちついた声を教えるようにというメッセージをふたりに送ります。
またまた場面は変わり「英国王のスピーチ」会場。そこにはジェームス・フランコとアン・ハサウェイが!「こんにちは、未来から素晴らしいニュースがあります。マイクの大きさが小さくなるんです。」驚く民衆。
次は「ブラック・スワン」激しいレッスン会場には変な格好をしたジェームス・フランコとアン・ハサウェイ。ハサウェイはナタリー・ポートマンに茶色いアヒルの踊りを教えます。
ついにふたりはボールドウィンの夢の中で本人と会います。「あなたの夢の中にまで押し掛けてきてすいません。」「いや、私達のいるところは、ジェームス・フランコとアン・ハサウェイの夢の中だよ。もし私の夢だったら今年も私が司会をしているからね。」とボールドウィン。「君たちの意識の中では今年の尼でミー賞の司会をする準備はできているんだ。」と諭されます。これでジェームス・フランコとアン・ハサウェイは、安心して司会をすることができると思い現実の世界へ。
と思ったら、ふたりが行ったのは「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のツイン・パインズ・モール。デロリアンに乗り込んだ二人はアカデミー賞へ。ハサウェイは「待って。せっかくタイムマシーンに乗ったんだからもっと夢のあるところへ行きましょうよ。」するとフランコが「いや、俺たちの夢はアカデミー賞だよ。」デロリアンは、マーティーとドクを通り越し未来へ向かいました。
この10分弱のオープニング・ムービーはとてもよくできていました。一番感動したのは合成技術です。おそらくジェームス・フランコとアン・ハサウェイはブルーバックで撮影をしたのですが、各作品の名場面に見事に合成されていたのです。ご存知のように作品ごとにカメラマンと監督はフィルムテストを行い作品のルックを決めていきます。それはモノトーン調であったり、カラフルであったり、フィルムっぽくザラザラした質感だったりします。それら作品のルックにあわせて奇麗に合成され、あたかも映画のそのシーンにふたりがいるように見えるのです。この合成作業には、カメラマンから撮影の細かな設定値のデータを入手しないとできません。オープニングムービーのチームは、企画が決まってから素材を取り寄せ、撮影時や現像時の細かなセッティング値を入手しアカデミー賞までに完成させたのです。
もちろんアカデミー賞の導入という意味でも今年の映画が理解できよくできていたのですが、視聴者があまり気づかない合成に注意が払われていたのは、いかにもハリウッド映画の授賞式だなあと感心しました。
話を授賞式に戻しましょう。スクリーンが上方に競り上がると、司会の二人が登場します。ジェームス・フランコとアン・ハサウェイです。
フランコはiPhoneで撮影しながらの登場です。会場は4階まで満席です。1階には蒼々たる俳優陣が座っています。ハサウェイは舞台上から思わず「あー、みんな本物だわ。」と呟いてしまいました。ふたりはとても若々しく今までの重厚なアカデミー賞とはちょと違った雰囲気でした。ジェームス・フランコとアン・ハサウェイはとても魅力的で明る爽やかなスタートとなりました。
ハサウェイ "今夜はこの1年に公開された名作と名演技、そして歴史上のアカデミー賞受賞作を振り返ります!”
フランコ "まずはじめに1939年の名作をご紹介します"
舞台は暗転し、そこにはあの有名なテーマ曲とともに「風と共に去りぬ」のキービジュルが映し出されました。
今年のアカデミー賞は、コーナー毎に名作を振り返る構成のようです。

美術賞:Art Direction
プレゼンターはアカデミー賞を2度受賞したトム・ハンクスです。
『「風と共に去りぬ」は作品賞、撮影賞、美術賞を同時受賞した初の作品です。時代を超えた名作には美術監督、撮影カメラマンによるビジュアル面での要素が巧みに織り込まれています。過去にこの3部門を受賞した作品は「ベン・ハー」「アラビアのロレンス」「ウェストサイド物語」「シンドラーのリスト」です。最近では10円前にこの作品が受賞しました。』
舞台は暗転し、スクリーンには水中に沈んでいくひとつのネックレス。そこに誰もが聞いたことのあるジェームス・オーナーのテーマ曲が流れます。スクリーンにはタイタニック号の勇姿が!
『ジェームス・キャメロンの「タイタニック」では、素晴らしい美術と撮影が映画に作品賞をもたらしました。今回は3作品がこの3部門にノミネートされています。それでは美術賞から発表します。』
『アリス・イン・ワンダーランド』
ティム・バートンのイメージを見事に撮影物として作り上げました。
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』
ハリー・ポッターの世界観を壊すことなく撮影しやすいセットデザインをするのは大変な作業だったはずです。
『インセプション』
あまりにもおおくの要素を映像化するために膨大な時間をかけて美術を制作しました。JR東海が撮影させなかった新幹線の内部やボーイング747の内部も地味ながら見事なできばえでした。
『英国王のスピーチ』
ロケセットが多いように見えますが、よく作り込まれています。
『トゥルー・グリット』
西部劇の世界観をコーエン兄弟風にアレンジした乾いた感じが素晴らしかったです。
受賞は『アリス・イン・ワンダーランド』のR・ストロムバーグとK・オハラでした。
受賞者は、ノミネートされた人を褒めたたえ、ティム・バートンにオスカー像を半分にカットして渡そうか、と冗談を言ってました。それほどバートンが美術に与えた影響がおおきいのです。

撮影賞:Cinematography
引き続きトム・ハンクスがプレゼンターです。ノミネートは
『ブラック・スワン』
銀のこしか、DIによる効果かわかりませんが、荒くて色がこってりした特徴のあるトーンの作品でした。作品にあった照明とともに素晴らしい撮影でした。
『インセプション』
IMAXや35mmなどを取り入れたとても大変でコストのかかる撮影をやり遂げています。照明も素晴らしく、監督自身が拘った撮影機材だけあり、全編を通して難しい夢の世界をビジュアル化するのに成功しています。
『英国王のスピーチ』
イギリスらしいちょっと暗い空気感に透明度のある照明は、撮影時にかなり苦労したと思います。DIだけではできない色の濃淡が美しい作品でした。
『ソーシャル・ネットワーク』
映像に拘るデビッド・フィンチャーは今回、かなりおさえた撮影をしていました。が、デジタルで撮影された映像は美しくアナログっぽさを出すためにかなり苦労したのではないでしょうか。
『トゥルー・グリット』
コーエン兄弟らしい映像は、絵を見ただけでコーエン印が透けて見えるような気持ちよさがあります。こういう個性のある映像作りは是非続けてほしいです。
受賞は、『インセプション』のウォーリー・フィスター。オスカーの常連で今回4回めの受賞です。フィスターはクリストファー・ノーランと組んで仕事をしています。監督と撮影の二人であの世界観を作っているんですね。

助演女優賞:Performance by an actress in a supporting role
プレゼンターとして、Living Legend、カーク・ダグラスが登場しました!
杖をついて歩いてきたダグラスは、年を取りましたがしっかりとした足取りです。彼が舞台中央に来ると、客席にいたすべての映画人はスタンディング・オベーションとなりました。
まずは司会のふたりに敬意を表し、ダグラスはある告白をしました。「私は才能のある女性が好きで美しい女性にも目がないのです。これから紹介する5人の女性は私の好みの方々です。
『ザ・ファイター』のエイミー・アダムス、『英国王のスピーチ』のヘレナ・ボナム=カーター、『ザ・ファイター』のメリッサ・レオ、『トゥルー・グリット』のヘイリー・スタインフェルド、『Animal Kingdom』のジャッキー・ウィーヴァー。
発表前にダグラスはアドリブっぽい話を始めます。「ヒュー・ジャックマンが笑っているよ。オーストラリア人は自分が面白いと思い込んでるんだよ。コリン・ファースは笑っていない。イギリス人だからね。」なかなか受賞者を発表しないダグラスに皆が笑い出してしまいました。
受賞は、メリッサ・レオでした。「フローズン・リバー」で2年前に主演女優賞にノミネートされ(このときは「愛を読むひと」のケイト・ウィンスレットが受賞)、今回が初のアカデミー賞受賞となりました。
予想していなかったようで、レオは、かなり取り乱しながらのスピーチとなりました。ちょっとした失言もあり、それが彼女の個性を引き出しとても好感が持てました。
舞台から下がるとき、興奮のあまりダグラスの杖をつきながら退場するレオは、素敵でした。
ミラ・クニスとジャスティン・ティンバーレイクの登場です。
『10年前にアニメ部門が設立され初めての受賞は「シュレック」でした。これから今年のアニメ作品を発表します。』すると舞台のスクリーンにアニメが映し出されました。「シュレック」の遠い遠い国です。二人は短編と長編のアニメ賞を発表します。

短編アニメーション賞
まずは、短編アニメに与えられる賞です。
ノミネートは『デイ&ナイト』、『The Gruffalo』(原題)、『Let's Pollute』(原題)、『The Lost Thing』(原題)、『Madagascar, carnet de voyage』(原題)です。
受賞は『The Lost Thing』のショーン・タンとアンドリュー・ヘルマンでした。

長編アニメーション賞
次は長編アニメに与えられる賞です。
ノミネートは、『ヒックとドラゴン』、『イリュージョニスト』、『トイ・ストーリー3』。
受賞はもちろん『トイ・ストーリー3』でした。ピクサー社は本当に偉大です。この作品が生まれるまでは大変なことがあまりにも多すぎましたが、観客に届ける作品が素晴らしいことがいかに大変かを思い知らされました(詳しくはこちら)。そして、最後まで諦めなかったジョン・ラセター、スティーブ・ジョブスは偉大です。
ハサウェイがアカデミー賞の歴史に触れます。
「1929年に映画業界の功績をたたえるためにアカデミー賞が始まりました。今夜の会場から道を挟んだハリウッド・ルーズベルト・ホテルが会場でした。」
すると舞台上に当時のホテルを模したセットが出現しました。
プレゼンターは、ジョシュ・ブローリンとハビエル・バルデムです。二人は白のタキシードで登場しました。キャス席に座るバルデムの妻、ペネロペ・クルスがモニターに映し出されます。abc放送は、こういうスイッチング、うまいですね。
ブローリン「脚色賞と脚本賞は第一回アカデミー賞からある部門です。」
バルデム「今も昔も変わらないのは、良い脚本は心に響くということです。」
ブローリン「読む人の感情をかきたて映画の可能性を無限に広げるのです。」
ブローリンとバルデムは脚色賞とオリジナル脚本賞を発表します。

脚色賞:Adapted Screenplay
ノミネートは、『127時間』、『ソーシャル・ネットワーク』、『トイ・ストーリー3』、『トゥルー・グリット』、『Winter's Bone』(原題)です。原作だったり続編だったり、映画のリメイクだったり、脚色とはざまざまなアプローチがありますが、今年ノミネートされた作品は、オリジナルに敬意を表しながら見事な脚色がなされたものばかりです。
受賞は、『ソーシャル・ネットワーク』のアーロン・ソーキンでした。ソーキンのスピーチは素晴らしかったです。
「チャイフスキーが35年前に『ネットワーク』で脚本賞を受賞しました。今回は脚色賞なので原作者のメズリックのおかげです。この脚本を書き上げるのに長い時間がかかりました。リサーチをしてくれた助手にお礼を言いたいです。監督のデビッド・フィンチャーがこの脚本に芸術的な映像を加えてくれました。SONYの皆さんにも感謝します。この映画は私にとって一生の誇りとなるでしょう。」
ソーキンはとても知的でまるで「ソーシャル・ネットワーク」そのままの風情で凛とした話し方をする人でした。

オリジナル脚本賞:Original screenplay
ノミネートは『Another Year』(原題)、『ザ・ファイター』、『インセプション』、『キッズ・オールライト』、『英国王のスピーチ』でした。
受賞は、『英国王のスピーチ』のデビッド・サイドラーでした。73歳の彼にとって初の受賞です。サイドラーのスピーチも素晴らしかったです。
「脚本家のスピーチだ。あー怖い。お前は大器晩成型だと父親に言われました。私は史上最年長の脚本賞受賞者ということになります。そして早くこの記録が何度も更新されることを望みます。家族に感謝します。そして女王閣下にも。ロンドン・タワーでメリッサ・レオのように汚い言葉を連発していたのに見逃してくれました。私は世界中の吃音に悩む人を代表してこの賞を受け取ります。我々には声があり、そのVOICEは届いたのです。」
タキシード姿のハサウェイが登場しました。そして歌を披露します。歌は"On My Own"です。それはオーストラリア人をからかった替え歌でした。今度はマリリン・モンロー風の格好をしたフランコが!
この幕間のパフォーマンス、今年はいまひとつ盛り上がりませんでした。舞台回しがうまいコメディアンや俳優達とは違い、若い二人が司会したことが裏目に出てしまいました。やはりウーピー・ゴールドバーグやアレック・ボールドウィンなど過去に司会した人たちがいかに偉大であったかを思い知らされる今年の授賞式でした。

外国語映画賞:Foreign Language Film
プレゼンターはラッセル・ブランドとヘレン・ミレンです。ミレンはフランス語で話しました。ブランドはそれをでたらめな訳で伝えました。
ノミネートは、『Biutiful ビューティフル』(メキシコ)、『Dogtooth』(原題)(ギリシャ)、『In a Better World』(原題)(デンマーク)、『Incendies』(原題)(カナダ)、『Hors La Loi』(原題)(アルジェリア)でした。
受賞はデンマークの『In a Better World』でした。

助演男優賞:Actor in a Supporting Role
リーズ・ウィザースプーンの登場です。「次はジャック・ニコルソンやショーン・コネリー、デンゼル・ワシントン、ハビエル・バルデムたちが過去に受賞した賞の発表です。」
ノミネートは『ザ・ファイター』のクリスチャン・ベイル、『Winter's Bone』のジョン・ホークス、『ザ・タウン』のジェレミー・レナー、
『キッズ・オールライト』のマーク・ラファロ、『英国王のスピーチ』のジェフリー・ラッシュ。
受賞は『ザ・ファイター』のクリスチャン・ベイルでした。ジェフリー・ラッシュだと思っていたので驚きました。クリスチャン・ベイルは初のオスカーだそうです。これも意外でした。
アカデミー協会のT・シェラック会長とディズニー・ABCのアン・スゥイーミー会長が登場しました。スゥイーミー会長が女性でしかも美しいことに驚かされます。アメリカでも屈指の巨大メディア企業のトップがこんなに聡明で美しいとは!日本の企業も見習うべきところがおおいですね。
二人の話は、ちょっといただけないものでした。要はABCは今後もアカデミー賞を放送しますといったもの。わざわざ放送しなくてもよかったです。

作曲賞:Original Score
次のプレゼンターは、ヒュー・ジャックマンとニコール・キッドマン。ご存知の通りオーストラリア人です。先ほど、替え歌で小馬鹿にされた二人です。「かつて映画に音はありませんでした。音と映像を結びつける技術が無かったのです。」チャップリンの「黄金狂時代」が上映されます。「映画館は生演奏を導入し映画は音楽と結ばれました。」フレッド・アステアとジンジャー・ロジャーズが映し出されます。「そして工学サウンドトラックが音声と映像を結びつけます。トーキーが発明されミュージカル映画が続きました。以来、音楽と音声は映画と永遠に結ばれ不可能はなくなりました。」THXのオープニング音楽が流れ、スクリーンには「ファンタジア」風に指揮者が浮かびます。スクリーンがあがると、そこにはオーケストラがいます。彼らが奏でるのはジョン・ウィリアムズ作曲の「スターウォーズ」のテーマです。会場にいた人たちは鳥肌ものだったはずです。オーケストラは舞台の前方にせり出してきます。曲は「E.T.」に変わります。そして演奏は急に終わってしまいます。もって聞きたかったです。
ノミネートは『ヒックとドラゴン』、『インセプション』、『英国王のスピーチ』、『127時間』、『ソーシャル・ネットワーク』でした。
受賞は、『ソーシャル・ネットワーク』のトレント・レズナーとアティカス・ロスでした。『インセプション』のハンツ・ジマーだと思いましたが、アカデミー会員は、玄人受けする曲に投票したようです。
今回は、83回アカデミー賞の前半をお伝えしました。司会と構成が単調で映画ファンには物足りないオープニングとなりましたが、このあと、メインの賞が発表されるにつれ面白くなっていきます。
次回もお楽しみに!
第83回アカデミー賞ノミネート発表 [映画賞・映画祭]


◆◆作品賞・Best motion picture of the year◆◆
『ブラック・スワン』
『ザ・ファイター』
『インセプション』
『キッズ・オールライト』
『英国王のスピーチ』
『127時間』
『ソーシャル・ネットワーク』
『トイ・ストーリー3』
『トゥルー・グリット』
『Winter's Bone』(原題)
今年もノミネートが10作品です。今年はどれがとってもおかしくないです。

◆◆監督賞・Achievement in directing◆◆
ダーレン・アロノフスキー(『ブラック・スワン』)
デヴィッド・O・ラッセル(『ザ・ファイター』)
トム・フーパー(『英国王のスピーチ』)
デヴィッド・フィンチャー(『ソーシャル・ネットワーク』)
ジョエル・コーエン&イーサン・コーエン(『トゥルー・グリット』)
監督賞は、誰がとってもおかしくないです。それぞれが非常にレベルの高い演出をしました。個人的にはコーエン兄弟に取ってほしいですが、トム・フーパーあたりが有力なのではないでしょうか。

◆◆主演男優賞・Performance by an actor in a leading role◆◆
ハビエル・バルデム(『Biutiful ビューティフル』)
ジェフ・ブリッジス(『トゥルー・グリット』)
ジェシー・アイゼンバーグ(『ソーシャル・ネットワーク』)
コリン・ファース(『英国王のスピーチ』)
ジェームズ・フランコ(『127時間』)
コリン・ファースが有力です。

◆◆主演女優賞・Performance by an actress in a leading role◆◆
アネット・ベニング(『キッズ・オールライト』)
ニコール・キッドマン(『Rabbit Hole』(原題))
ジェニファー・ローレンス(『Winter's Bone』(原題))
ナタリー・ポートマン(『ブラック・スワン』)
ミシェル・ウィリアムズ(『ブルーバレンタイン』)
妊娠中のナタリー・ポートマン、受賞なるか?

◆◆助演男優賞・Performance by an actor in a supporting role◆◆
クリスチャン・ベイル(『ザ・ファイター』)
ジョン・ホークス(『Winter's Bone』(原題))
ジェレミー・レナー(『ザ・タウン』)
マーク・ラファロ(『キッズ・オールライト』)
ジェフリー・ラッシュ(『英国王のスピーチ』)
今年、一番気になる賞です。助演がいて映画が引き立つ作品ばかりノミネートされています。

◆◆助演女優賞・Performance by an actress in a supporting role◆◆
エイミー・アダムス(『ザ・ファイター』)
ヘレナ・ボナム=カーター(『英国王のスピーチ』)
メリッサ・レオ(『ザ・ファイター』)
ヘイリー・スタインフェルド(『トゥルー・グリット』)
ジャッキー・ウィーヴァー(『Animal Kingdom』(原題))
誰がとってもいいですね。個人的にはヘイリー・スタインフェルドに取って欲しいです。

◆◆優秀アニメ作品・Best animated feature film of the year◆◆
『ヒックとドラゴン』
『イリュージョニスト』
『トイ・ストーリー3』
大ヒットした「トイ・ストーリー3」でしょう。

◆◆最優秀外国語映画賞・Best foreign language film of the year◆◆
『Biutiful ビューティフル』(メキシコ)
『Dogtooth』(原題)(ギリシャ)
『In a Better World』(原題)(デンマーク)
『Incendies』(原題)(カナダ)
『Hors La Loi』(原題)(アルジェリア)

◆◆長編ドキュメンタリー賞◆◆
『Exit Through the Gift Shop』(原題)
『ガスランド 〜アメリカ 水汚染の実態〜』
『Inside Job』(原題)
『レストレポ アフガニスタンで戦う兵士たちの記録』
『ヴィック・ムニーズ ごみアートの奇跡』

◆◆オリジナル脚本賞・Original screenplay◆◆
『Another Year』(原題)
『ザ・ファイター』
『インセプション』
『キッズ・オールライト』
『英国王のスピーチ』
最有力は「英国王のスピーチ」ですが、「インセプション」の脚本が素晴らしかったです。さて、オスカーは誰の手に?

◆◆脚本賞(原作あり)・Adapted screenplay◆◆
『127時間』
『ソーシャル・ネットワーク』
『トイ・ストーリー3」
『トゥルー・グリット』
『Winter's Bone』(原題)
渋い「トゥルー・グリッド」が個人的には好きですが、「問い・ストーリー3」が有力です。

◆◆美術賞◆◆
『アリス・イン・ワンダーランド』
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』
『インセプション』
『英国王のスピーチ』
『トゥルー・グリット』
どの作品も素晴らしかったですね。オスカーは誰の手に?

◆◆撮影賞◆◆
『ブラック・スワン』
『インセプション』
『英国王のスピーチ』
『ソーシャル・ネットワーク』
『トゥルー・グリット』
「インセプション」の撮影は本当に素晴らしかったです。しかもIMAX撮影もあり、撮影チームはとても大変でした。「ソーシャル・ネットワーク」は、ポストプロダクションで素晴らしい映像になっているので、撮影賞ではないような気がします。

◆◆衣装デザイン賞◆◆
『アリス・イン・ワンダーランド』
『I Am Love』(原題)
『英国王のスピーチ』
『テンペスト』
『トゥルー・グリット』
衣裳は、現代劇でもかなり頑張っているのですが、ちょっとわかりやすい作品が並んでしまいました。

◆◆編集賞◆◆
『ブラック・スワン』
『ザ・ファイター』
『英国王のスピーチ』
『127時間』
『ソーシャル・ネットワーク』

◆◆メイクアップ賞◆◆
『Barney's Version』(原題)
『The Way Back』(原題)
『ウルフマン』

◆◆音楽賞◆◆
『ヒックとドラゴン』
『インセプション』
『英国王のスピーチ』
『127時間』
『ソーシャル・ネットワーク』
「インセプション」良かったです。

◆◆歌曲賞◆◆
「Coming Home」(『Country Strong』(原題))
「I See the Light」(『塔の上のラプンツェル』)
「If I Rise」(『127時間』)
「We Belong Together」(『トイ・ストーリー3』)

◆◆視覚効果賞◆◆
『アリス・イン・ワンダーランド』
『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART1』
『ヒア アフター』
『インセプション』
『アイアンマン2』

◆◆音響効果賞◆◆
『インセプション』
『トイ・ストーリー3』
『トロン:レガシー』
『トゥルー・グリット』
『アンストッパブル』

◆◆録音賞◆◆
『インセプション』
『英国王のスピーチ』
『ソルト』
『ソーシャル・ネットワーク』
『トゥルー・グリット』
音が重要な「英国王のスピーチ」。やはりこの作品が取るのではないでしょうか。

◆◆短編実写賞◆◆
『The Confession』(原題)
『The Crush』(原題)
『God of Love』(原題)
『Na Wewe』(原題)
『Wish 143』(原題)

◆◆短編ドキュメンタリー賞◆◆
『Killing in the Name』(原題)
『Poster Girl』(原題)
『Strangers No More』(原題)
『Sun Come Up』(原題)
『The Warriors of Qiugang』(原題)

◆◆短編アニメーション賞◆◆
『デイ&ナイト』
『The Gruffalo』(原題)
『Let's Pollute』(原題)
『The Lost Thing』(原題)
『Madagascar, carnet de voyage』(原題)
アカデミー賞は、2011年2月27日(日)8時からロサンゼルスのコダックシアターで開催されます。アメリカではabcが中継し、日本ではWOWOWが、中継します。
第68回 ゴールデン・グローブ賞 発表 [映画賞・映画祭]

The 68th Annual Golden Globe Awards
ゴールデン・グローブ賞が発表になりました。
結果をお伝えします。
★が受賞です。
◆最優秀映画作品賞(ドラマ)
・ブラック・スワン
・ザ・ファイター
・インセプション
・英国王のスピーチ
★ソーシャル・ネットワーク
今回は名作が揃いました。どの作品が受賞してもおかしくないですね。「ソーシャル・ネットワーク」はタイムリーだったからの受賞でしょうか。
◆最優秀主演女優賞(ドラマ)
・ジェシー・アイゼンバーグ「ソーシャル・ネットワーク」
★コリン・ファース「英国王のスピーチ」
・ジェームズ・フランコ「127 HOURS」
・ライアン・ゴスリング「BLUE VALENTINE」
・マーク・ウォールバーグ「ザ・ファイター」
コリン・ファースの演技は素晴らしかったです。納得のいく受賞です。
◆最優秀主演男優賞(ドラマ)
・ハル・ベリー「FRANKIE AND ALICE」
・ニコール・キッドマン「ラビット・ホール(原題)」
・ジェニファー・ローレンス「WINTER’S BONE」
★ナタリー・ポートマン「ブラック・スワン」
・ミシェル・ウィリアムズ「BLUE VALENTINE」
「レオン」の子役から素晴らしかった彼女が堂々の受賞です。作品自体が傑作なので当然の受賞ですね。
◆最優秀映画作品賞(ミュージカル・コメディー部門)
・アリス・イン・ワンダーランド
・バーレスク
★キッズ・オールライト
・RED/レッド
・ツーリスト
下馬評通りの結果でした。
◆最優秀主演女優賞(ミュージカル・コメディー部門)
★アネット・ベニング「キッズ・オールライト」
・アン・ハサウェイ「LOVE AND OTHER DRUGS」
・アンジェリーナ・ジョリー「ツーリスト」
・ジュリアン・ムーア「キッズ・オールライト」
・エマ・ストーン「EASY A」
◆最優秀主演男優賞(ミュージカル・コメディー部門)
・ジョニー・デップ「アリス・イン・ワンダーランド」
・ジョニー・デップ「ツーリスト」
★ポール・ジアマッティ「BARNEY’S VERSION」
・ジェイク・ギレンホール「LOVE AND OTHER DRUGS」
・ケヴィン・スペイシー「CASINO JACK」
◆最優秀アニメーション賞
・怪盗グルーの月泥棒 3D
・ヒックとドラゴン
・イリュージョニスト
・塔の上のラプンツェル
★トイストーリー3
今年のアニメは、誰もがこの作品をおすでしょう。
◆最優秀外国語作品賞
・BIUTIFUL(メキシコ/スペイン)
・THE CONCERT(フランス)
・THE EDGE(ロシア)
・I AM LOVE(イタリア)
★イン・ア・ベター・ワールド(原題)(デンマーク)
◆最優秀助演女優賞
・エイミー・アダムス「ザ・ファイター」
・ヘレナ・ボナム=カーター「英国王のスピーチ」
・ミラ・クニス「ブラック・スワン」
★メリッサ・レオ「ザ・ファイター」
・ジャッキー・ウィーヴァー「ANIMAL KINGDOM」
◆最優秀助演男優賞
★クリスチャン・ベイル「ザ・ファイター」
・マイケル・ダグラス「ウォール・ストリート」
・アンドリュー・ガーフィールド「ソーシャル・ネットワーク」
・ジェレミー・レナー「ザ・タウン」
・ジェフリー・ラッシュ「英国王のスピーチ 」
◆最優秀監督賞
・ダーレン・アロノフスキー「ブラック・スワン」
★デヴィッド・フィンチャー「ソーシャル・ネットワーク」
・トム・フーパー「英国王のスピーチ 」
・クリストファー・ノーラン「インセプション」
・デヴィッド・O・ラッセル「ザ・ファイター」
今までの作品で一番力を抜いた映画なのに監督賞受賞です。力まないほうが良い結果になる良い例ですね。
◆最優秀脚本賞
・ダニー・ボイル、サイモン・ボーフォイ「127 HOURS」
・リサ・チョロデンコ、スチュアート・ブルムバーグ「キッズ・オールライト」
・クリストファー・ノーラン「インセプション」
・デヴィッド・サイドラー「英国王のスピーチ 」
★アーロン・ソーキン「ソーシャル・ネットワーク」
個人的には「インセプション」に受賞して欲しかったです。
◆最優秀作曲賞
・アレクサンドル・デスプラ「英国王のスピーチ 」
・ダニー・エルフマン「アリス・イン・ワンダーランド」
・A・R・ラフマーン「127 HOURS」
★トレント・レズナー、アッティカス・ロス「ソーシャル・ネットワーク」
・ハンス・ジマー「インセプション」
◆最優秀歌曲賞
・“BOUND TO YOU”「バーレスク」
作曲:サミュエル・ディクソン 作詞:クリスティーナ・アギレラ、シア・ファーラー
・“COMING HOME”「COUNTRY STRONG」
作詞・作曲:ボブ・ディピエロ、トム・ダグラス、ヒラリー・リンジー、トロイ・フェルゲス
・“I SEE THE LIGHT”「塔の上のラプンツェル」
作曲:アラン・メンケン 作詞:グレン・スレイター
・“THERE’S A PLACE FOR US”「ナルニア国物語/第3章:アスラン王と魔法の島」
作詞・作曲:キャリー・アンダーウッド、デヴィッド・ホッジス、ヒラリー・リンジー
★“YOU HAVEN’T SEEN THE LAST OF ME”「バーレスク」
作詞・作曲:ダイアン・ウォーレン
納得です。素晴らしい曲でした。
最近、日本でも報道されるようになってきたゴールデングローブ賞。当日私はたまたま授賞式会場付近にいました。華やかなショーは、町中を熱気に包んでいるようでした。
淡々と進みましたがスピーチの内容はアカデミー賞よりも面白いように感じました。
さて、アカデミー賞は、どうなるのか?楽しみです。
3D映画がやってきた [映画技術]

3D映画がやってきた!
2010年は3Dの年でした。「アバター」の登場で世の中は見事に3D映画へと流れました。たった1本の映画が世界の映画産業を一変させてしまったのです。そして数多くの3D映画が制作され、ある作品は成功し、ある作品は失敗しました。
今回は、この3D映画、そしてIMAXについて記していこうと思います。
3D技術は映画が発明されて直ぐに基本原理が開発されています。当時は右目と左目の視差原理を利用するという根本的な概念は理解できていたのですが、立体映像をフィルムで撮影してそれを観客に見せるには、技術的な部分で問題点がおおかったようです。それでも祭りやイベントなどでは、立体映像を見せる興業などが流行っていたそうです。
ヒッチコックの目指した3D
時代は移り、1950年代に3D映画ブームが起こりました。当時は大きな35mmカメラを2台同時に動かし、右目用映像と左目用映像を撮影、そして2台の映写機で上映するという大変面倒なものでした。この頃は3Dにおおくの映画会社が飛びつき劣悪なホラー映画やイベント色の強い映画が乱造されました。
そんな中、この3D技術に興味を持ったのがアルフレッド・ヒッチコックです。当時ハリウッドで急成長株だったヒッチコックは、潤沢な資金を元にクオリティの高い3Dサスペンス映画を企画します。そして3D技術を確固たるものにして、映画産業に新たなマーケットを築くべく努力します。その映画のタイトルは「ダイヤルMを廻せ!」。ヒッチコックは丁寧に全編3D撮影を行いました。カメラ2台を常に使い、フィルムも当然2倍必要となりました。そして、この困難な撮影を終え編集も行い、テスト上映に辿りつきました。
その3D映像を見たヒッチコックは、驚くべき決断を下します。「ダイヤルMを廻せ!」は、3D映画としてではなく2D映画として公開する、と。
結局、3D効果というのは、この作品には向かず、2Dで見て貰ったほうがヒッチコックの演出が伝わるということでした。おそらく「ダイヤルMを廻せ!」の技術スタッフや興業チームはとても落胆したでしょう。内容に関わらず3D映画というのは宣伝になりますし、それまでの粗悪3D映画に亜妃ってしまった観客はヒッチコック印の3D映画に飛びついたはずです。
結果、「ダイヤルMを廻せ!」は、2D公開されヒッチコックの予想通り内容が評価されヒットしました。その後、時々ニューヨークやロンドンのアートシアターで「ダイヤルMを廻せ!」3D版の上映が行われました。私は1991年にNYの小さな映画館の深夜上映会で3D版を見ましたが、確かにヒッチコックの意図は理解できました。3Dでなくても十分なのです。
50年代の3Dブームは、終わっていきます。そして暫くは3D映画があったことすら忘れ去られてしまったのです。
1980年代のブーム
その後、新たな3D映画ブームが到来します。偏光レンズというメガネをかけることで、過去の3D映画よりも迫力のある映像を見られる技術が開発されたのです。このとき、新しい技術に飛びついたのはやはりホラー色の強い映画でした。「ジョーズ3D」「13日の金曜日3-D」です。私は劇場に市を運びましたが、これはなかなか迫力があり満足度が高かったです。このブームの最大の成功作は「キャプテンEO」です。映画館での上映ではありませんでしたがジョージ・ルーカスがプロデューサーを務め、当時生活に困っていたかつての師コッポラを監督として迎え入れ、マイケル・ジャクソンを主演に迎えた短編は、大きな話題となりました。
このとき。史上初めて一般家庭用の3D再生機が発売されたのも話題となりました。テレビは普通のアナログブラウン管テレビです。再生にはVHDを使いました(VHDとは、VHSテープに変わる新しいメディアとして登場したディスク型の再生デバイスです。レーザーディスクとの競争に敗れ発売間もなく消えていきました)。私は、当時この3D再生対応VHDを購入して3D映画を家庭で楽しんでいましたが、3Dソフトがほとんど発売されず当時は困ったものでした。そのうちVHD自体が消えてしまいました。
80年代の3Dブームは、圧倒的なソフト不足のうちに終焉を迎えていったのです。
そして2010年代
世の中はデジタル時代に移行していました。
新たな3Dブームは、ジェームス・キャメロンがきっかけです。彼は新作をデジタル3Dで撮影し、デジタル3D装置で上映するという大胆な考えを発表します。撮影機材を全て新しく開発し、上映方式も全て新しくすると言うのです。この投資額は莫大ですし、劇場側がどこまで着いてくるのかわかりませんでしたが、彼の野望はどんどん広がり、誰も彼を引き留める人はいなかったのです。
キャメロンは、SONYを訪ね全く新しいデジタル3Dカメラの制作を依頼します。それは、より人間の目の構造に近いカメラです。人間は物を見るとき面白い目の動きをします。遠くのものを見るときは2つの黒目の幅は約4.5cmです。しかしものを近づけると寄り目になるのです。ものをどんなに遠ざけても黒目は4.5cm以上にはなりません。
この原理をカメラに応用したのです。カットによって2つのレンズの幅が変化するのです。これを視差と呼びます。カメラレンズの前に広がる空間に視差ポイントを決めるという新しい仕事が生まれました。ポイントより手前にある物は飛び出して見え、後ろにある物は奥行きとして見えるのです。
この技術を利用し非常に広大な奥行き感を表現することが出来るようになりました。
同時にキャメロンは健康被害についても研究します。3D映像は目から入る情報に嘘をついて脳内で立体映像を作らせます。この過程で船酔いのような副作用を生んでしまうのです。これは人によって差がありますが、飛び出す効果がおおいほど健康被害も増えることがわかりました。そこで、飛び出し効果は抑えて奥行き感を利用した立体映像を制作することを思いつきました。
約10年を費やして3Dを原理から見つめ直したキャメロンは、その全ての知識をつぎ込み「アバター」を制作したのです。
ヒットすると思った世界中の映画館は、フィルム上映機を外し、新しいデジタル3D上映機を購入して設置しました。「アバター」は、フィルムで上映されているわけではなくデジタル上映だったのです。
3Dデジタル映画「アバター」は世界中で大ヒットしました。これによりおおくの映画館が3D対応になったのです。そして、その後制作される3D映画は映画館の設備を心配する必要がなくなりました。
もうひとつ、キャメロンが変えたことがあります。それはIMAXです。IMAXというのは、普通の35mmよりもはるかに大きなフィルム(70mmフィルムを横に使う)を使い映像を撮影し、巨大なスクリーンで上映するシステムです。もともとは博覧会会場などで使われていましたが、北米ではIMX人気があり、町中にもIMAX映画館が設置され主に大自然の風景を撮影した映画を上映していました。日本にも90年代にIMAXシアターが作られ、東京では新宿、品川などに、大阪では天保山、札幌にも作られました。しかし当時は教育的なIMAX映画がおおく一般のお客さんを確保するまでに至らず2008年頃までに全てのIMAX映画館が閉鎖されてしまいました。
キャメロンは「アバター」でIMAXのデジタル3D化にも挑戦したのです。それは、通常の映画館で上映されるシネマスコープやビスタサイズではなくIMAX4:3の広大なキャンパスに3D映像を描くという挑戦です。IMAX用に別スタッフを雇ったキャメロンは、映画館で上映される3D版「アバター」とは別にIMAX版「アバター」も制作し同時に公開しました。
皆さんは「アバター」をどこで見ましたか?IMAXでご覧になられた方はラッキーです。IMAX「アバター」は、3D版を凌ぐ素晴らしい映像でした。
「アバター」は、映画業界に歴史的革新を起こしました。世界中の劇場にはデジタル上映機が導入され3D対応になったのです。そして、沢山の3D映画が制作されるようになりました。中にはただ3D映画ブームに乗っかった粗悪な3D作品が作られました(有名な例は「タイタンの戦い」「海猿3」)。ハリウッドの大物、ジェフリー・カッツェンバーグは声明を発表し、今後いい加減な3D映画を制作するのはやめようと呼びかけました。クオリティの高い3D映画をお客さんに提供することで、キャメロンが築いた3Dマーケットを維持しようというわけです。
ハリウッドでは、この意見にほとんどの映画人が賛同し、現在では健康被害に関するルールも決められ、続々と3D映画が撮影されています。
日本では、きちんとした3D映画として「3丁目の夕日3」が撮影中です。この作品は期待できます。「怪物くん」は残念ながら2D撮影を後で3D変換する疑似3Dです。今後は、映画が、きちんと3Dで制作されているのかを確認して、疑似だったら2D版で見ることをお勧めします。
あまり知られていませんが、世界初の3D連続ドラマが日本で作られました。地上波テレビでは3D番組が解禁されていないのでスカパー!でのみの放送ですが、このドラマは「アバター」チームから技術や知識を学んだスタッフが制作している本物の3D作品です。
タイトルは「TOKYOコントロール」24時間日本の空を守る航空管制官達を描いたドラマです。
「アバター」から始まった3Dブームは、過去のブームと異なり一過性ではないような感じがしています。今後は、制作者がいかにクオリティを維持してお客さんを満足させるのかにかかっています。
<ブログリンク>
アバター
トイ・ストーリー3 [アニメ]

Toy Story 3
既にご存じの大ヒット映画「トイ・ストーリー」の3作目を紹介します。パート3制作までには、皆さんの知らないところでいろんな事件が起こっていました。
「トイ・ストーリー」の製作会社であるピクサーが「スターウォーズ」のジョージ・ルーカスによって設立され、その後アップルのスティーブ・ジョブスが買収、アニメ映画が製作されるまでの顛末は、以前お伝えしました。(詳しくはこちら)
ピクサー社は、実はとんでもない苦労をし、様々な事件に巻き込まれながら成功を手にしていました。
ピクサーによる長編アニメ第一作である「トイ・ストーリー」が劇場公開される際、配給会社であるディズニーは、ピクサーが作り上げたキャラクターの権利は全てディズニー社に属するという契約を結びました。さらにディズニーは、続編を作る権利も所有する契約もしていました。
当時のピクサーは、まだ誰にも知られていない小さな小さなアニメ制作会社でした。さらに"コンピューターで作るアニメ"という未知の分野で長編アニメを制作するというリスクもあり、配給契約はディズニー社に有利なものになったのです。当時はピクサー社長であるスティーブ・ジョブスは映画に興味がなく、ディズニーとの契約にそれほど関心を払わなかったようです。
「トイ・ストーリー」は、ディズニーによって世界配給され、世界的な大ヒットとなりました。そしてその後は、沢山のアニメ会社がCGアニメを制作し、現在ではアメリカにあるアニメ会社のほぼ100%がCGアニメ専門になってしまいました。残念なのは、「白雪姫」で初めて長編アニメを制作したディズニー・アニメーション・スタジオまでもが手書きアニメのスタッフを解雇し、CGアニメ専門の制作会社になってしまったことです。
当時のディズニーの社長マイケル・アイズナーは、「ピーターバン2」のように、ディズニーの過去名作の続編を劇場で公開するのではなくDVDで発売する戦略をとっていました。知名度のある有名作品の続編を安く作り、ビデオ市場で簡単に儲けようという作戦です。
アイズナーは当然「トイ・ストーリー」の続編の制作を強く望みました。「トイ・ストーリー2」もDVDでのみ発売される制作費の安い100分のアニメ作品でした。
アイズナーの戦略は販売面では貢献したものの、できの悪い作品群を生み出してしまいました。ウォルト・ディズニーが作ったクオリティの高いアニメ作品の続編が粗製濫造され、世界中のディズニーファンががっかりしたのです。「トイ・ストーリー2」もこれと同じような運命になるはずでした。
しかし、「トイ・ストーリー2」の制作過程を見たピクサーの上層部は、素晴らしい出来になることを確信して、この続編を劇場用の長編にしようと試みました。きちんと制作費をかけてクオリティの高い作品を作ろうとしたのです。
当初、ディズニーとピクサーとの契約は劇場用アニメ3作品でした。「トイ・ストーリー2」は続編という扱いでスタートしたので、契約の3作には含まれていなかったのです。続編を作る権利はディズニー社にありました。なので、2だろうが3だろうがディズニーが勝手に作って良いという契約だったのです。しかし「トイ・ストーリー2」が劇場で公開されることになると、ちょっとややこしくなってきます。この「トイ・ストーリー2」は、続編という扱いなのか、それとも劇場用アニメという扱いなのか、人によってとらえ方が変わってくるのです。
ディズニー社は当然「トイ・ストーリー2」は続編だと主張します。ピクサー社は「トイ・ストーリー」「バグズ・ライフ」を製作したので、契約上は3本目の「モンスターズ・インク」まではディズニーが独占して配給権を持つと考えました。
ピクサー社は「トイ・ストーリー2」は劇場用映画なので「トイ・ストーリー」「バグズ・ライフ」「「トイ・ストーリー2」までが契約で、「バグズ・ライフ」以降はディズニーとの契約にとらわれないと主張したのです。
ここからは泥沼の戦いと化していきます。アイズナーは、それならば「トイ・ストーリー3」はサークル7・アニメーション社という全く関係ない会社に制作発注してディズニーが勝手に作ると表明しました。契約には続編はディズニーが好きなように作れるという項目が含まれています。なので、ピクサーはどうしようもありませんでした。さらにバズの声優を担当したティム・アレンはサークル7版「トイ・ストーリー3」の出演にOKを出してしまいます。これによりサークル7は、新たな脚本を仕上げました。その内容はファンにはがっかりするものです。おもちゃ会社に作られたバズは沢山あるはずです。台湾で作られたバズは、世界中で自分と同じバズが作られていることを知ります。さらにリコールされていることがわかり回収されるのです。
このようにアイズナー率いるディズニー社は、ファンの期待を裏切り、クリエイターの気持ちを踏みにじりながら突き進んでいました。しかし、この泥仕合はあまり知られることなく水面下で行われていたこと、そして出来の悪いアニメでもそれなりに儲かってしまったという問題があり、アイズナーはディズニー社でますます力を付けていったのです。ディズニー社の株主達も儲かれば良いという立場を取り、アイズナーを支持しました。
ウォルト・ディズニーの孫であるロイ・E・ディズニーは、ディズニー社で役員として頑張っていました。彼が唯一の"ディズニー"の血を持っている人物でした。ロイは、アイズナーの金儲け主義に抵抗します。祖父であるウォルトが考えた良質のアニメ製作や子供達に夢を与えることの重要性を社内で叫び続けました。しかし、残念なことにロイの主張は退けられてしまいます。アイズナーも株主もロイの主張などどうでもいいことなのです。金さえあればいい、株価が上がればいい、と。
ロイは結局ディズニー社を辞めてしまいました。これによりウォルト・ディズニーの志はディズニー社からなくなってしまいました。もはやディズニーはディズニーでない。こういうコメントがマスコミに取り上げられましたが、時既に遅し。おおくのディズニーファンが失望したのです。
そんなタイミングで、面白いことが起きました。アイズナーが旗を振っていたディズニー名作の続編の売り上げが伸びず、その他の事業も不採算として失敗してきたのです。そして、ピクサーは相変わらずディズニーと揉め続けていたのです。ディズニーの株主達は一斉にアイズナーを非難します。そしてアイズナーは窮地に立たされてしまうのです。
2006年1月24日、電撃的な発表がなされました。ディズニー社はピクサー社の全ての株を購入し完全子会社化するというのです。私は驚き、困ったことになったなあと不安を感じました。ピクサーは戦いに敗れアイズナーに屈し、今後はつまらないアニメ会社に成り下がってしまうことをニュースは意味していました。きっとピクサーのクリエイター達は社を離れ、別の会社に移ることになります。そうなるとせっかくジョン・ラセターが何十年もかけて作り上げた素晴らしいピクサー社は事実上解体されることになるのです。しかし、日本で報道されていない詳細をネットで調べていくと、ワクワクする内容を発見しました。確かにピクサーはディズニー社に買収されてしまいました。しかし新しい組織図を見るとロイ・ディズニーがトップに復帰、アイズナーは社を去り、アニメ統括役員としてピクサーを作ったジョン・ラセター、ビジネス部門の役員としてピクサー社長だったスティーブ・ジョブスが名を連ねていたのです。
契約上、経理上はピクサーは買収された形になりますが、人的に見るとピクサーがディズニーを吸収したともみえるのでした。
こうして新生ディズニー社は、ウォルト・ディズニーの血を引くロイを中心に、クリエイティブ・マインドを持つピクサーのメンバーが引き継ぐことになりました。これによりディズニーとピクサーの契約問題は解消され、アイズナーが続けていた金だけ儲かれば良いという経営スタイルも見直されることになりました。当然サークル7による「トイ・ストーリー3」の制作は白紙に戻され、ピクサー・チームによる正当な続編として企画が再始動されたのです。
こうして様々な出来事を得て「トイ・ストーリー3」が動き出しました。監督だったジョン・ラセターはディズニー社の要職に就いたので、監督はできません。勿論企画会議やストーリーの構築時には関わりますが、制作はピクサーの若手スタッフに引き継がれました。ピクサーのスタッフ達はラセターのアニメ作りを何年も支えてきた強者です。3も「トイ・ストーリー」「トイ・ストーリー2」の設定を引き継ぎファンが満足できる話になりました。声優も今までのシリーズのメンバーが再結集しています。
「トイ・ストーリー3」の宣伝はとても巧みに行われました。3をイメージした複数のポスターを制作し町中のビルボードを使いました。これはかなり長期間に及ぶプロモーションです。公開が近づくとAppleのiPhone4の発売に合わせ、タイアップが行われました。これはディズニーの役員でありAppleのCEOであるスティーブ・ジョブスが動いています。
「トイ・ストーリー3」は、アメリカで公開され大ヒット作品になりました。そして日本でも2010年夏で一番のヒットになるそうです。世界的にも大ヒットしており、満足度も非常に高いそうです。
ディズニー社を株主やアイズナーから取り戻し、ディズニーファンが望んでいる"夢の国"を復活させたロイ・E・ディズニーは、2009年12月に他界しました。きっと天国から「トイ・ストーリー3」の大ヒットを心から喜んでいるに違いありません。
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NINE ナイン [アメリカ映画(00s)]

NINE
1993年、深刻な不景気から立ち直る前のニューヨーク・ブロードウェイ。ここで1本のミュージカルがオープンしました。1992年にロンドンのウエストエンドで始まった戯曲「蜘蛛女のキス」をミュージカル化した野心作です。
ロンドンで好評を博したこのミュージカルは、ニューヨークでの前評判も良く、私は映画版「蜘蛛女のキス」がとても好きだったので早速公開したばかりのミュージカル版を見に行きました。ブロードウェイでは伝説の女優チタ・リベラが蜘蛛女役を演じると言うことで劇場は異様な熱気に包まれていたのを覚えています。ミュージカル版「蜘蛛女のキス」はジョン・カンダーとフレッド・エップの素晴らしい楽曲、リベラたち役者人の熱演でとても素晴らしかったです。その舞台で振り付けをしていたのがロブ・マーシャルという若者でした。
アメリカの田舎ウイスコンシン州出身のロブ・マーシャルは、ペンシルバニア州にあるカーネギー・メロン大学を卒業し、ニューヨークのブロードウェイで振り付け師として成功しました。彼のブロードウェイまでの人生は正に現代のアメリカン・ドリームで、1993年の「蜘蛛女のキス」で彼の仕事は高く評価されました。その後、1994年には「くたばれヤンキース」、1998年には「She Loves Me」、1999年には「キャバレー」でトニー賞にノミネートされます。
マーシャルは、今後も順風満帆にブロードウェイの演出家、振り付け師として歩んでいくのだろうと思っていたところ、いきなり映画監督へ転身するというニュースが入ってきたのです。これには当時の舞台ファン、映画ファンは驚きました。しかしマーシャルが監督する作品が「シカゴ」であることで誰もが納得したのです。
マーシャルは自他共に認めるボブ・フォッシーの大ファンです。ボブ・フォッシーは、舞台の演出家・振り付け師であり、その後映画監督に転身しています。そしてフォッシーが企画して実現しなかった「シカゴ」の映画化を実現するにはマーシャル以外考えられないのです。
大きな気体を背負って、マーシャルは映画版「シカゴ」を監督します。フォッシーは主人公をマドンナで企画していましたが実現せず1987年に他界しました。マーシャルは主人公にレニー・ゼルウィガーを抜擢、脇にキャサリン・ゼタ=ジョーンズやクイーン・ラティファを配置して素晴らしい作品に仕上げました。なんとこの「シカゴ」は2002年のアカデミー賞12部門にノミネートされ、作品賞を含む6部門で受賞してしまいました。ゴールデングローブ賞でも作品賞を含むメインのカテゴリーを制覇します。
マーシャルは、舞台で評価されただけでなく映画でも最速でトップ評価されてしまいました。
前置きが長くなりましたが、そのロブ・マーシャルが「Memories of a Geisha」の次に映画監督として選んだのがこの「NINE」です。
皆さんはフェデリコ・フェリーニ監督の「8 1/2」(1963)という映画をご存じでしょうか?「道」(1954)、「甘い生活」(1959)などで有名なイタリア人監督の自伝的な映画です。彼はそれまで8本映画を撮っていて9作目の手前に自身の苦悩を描いた名作です。
この「8 1/2」をミュージカル化したのが「NINE」です。フェリーニの映画を見事にミュージカル化しておりとても素晴らしい舞台です。ミュージカル版は大成功しロングラン公演が行われました。そのミュージカル版を今度は映画にしようというわけです。
なので基本的に「NINE」は、「8 1/2」とほぼ同じストーリーです。ただ、複数の女性に翻弄されるひとりの男という要素が強くなっているように思います。
この企画は2007年にヴァラエティ誌により制作が発表されました。製作出資は「シカゴ」で製作をバックアップしたワインスタイン兄弟です。「イングリッシュ・ペイシェント」(1996)、「コールドマウンテン」(2003)のアンソニー・ミンゲラが脚本をリライトし撮影を開始する予定でしたが、アメリカ脚本組合のストが起こり脚本制作がストップしてしまいます。その間にミンゲラは54才という若さで病死してしまいました。その後ストは収束しミンゲラが書き残した台本を使い撮影が開始されたのは2008年10月でした。
主人公の"女に翻弄される映画監督"グイド役には「ノー・カントリー」「それでも恋するバルセロナ」のハビエル・バルデムがキャスティングされていましたが、ストにより撮影スケジュールが変わってしまったので、バルデムは降りダニエル・デイ=ルイスが新たに選ばれました。
今回はキャスティングに苦労したようで、主役の交代劇の他にも「シカゴ」でマーシャルと一緒に仕事をしたレニー・セルウィガーとキャサリン・ゼタ=ジョーンズは、役が気に入らず降板しています。
それでも、最終的にはアカデミー賞を受賞している名女優達(ニコール・キッドマン、ジュデイ・デンチ、マリオン・コティヤール、ペネロペ・クルス)が参加を表明、イタリア映画界の大女優ソフィア・ローレンも参加するというとても豪華な俳優陣となりました。
ちなみに、キャサリン・ゼタ=ジョーンズのやるはずだったクラウディア役はニコール・キッドマンが担当しています。ペネロペ・クルスはクラウディア役でオーディションを受けましたがカルラ役になりました。マリオン・コティヤールは、ジュデイ・デンチが演じた衣装デザイナーのリリー役のオーディションを受けましたがグイドの妻のリリーとなりました。ケイティ・ホームズとデミー・ムーアもオーディションを受けましたが落ちました。
映画はシネスコの画角を最大限に活かした素晴らしい映像で撮影されました。撮影監督のディオン・ビープはとても優秀な人です。「Memories of a Geisha」のメイキングでも感心させられましたが、自然光とライティングをここまで巧みに使いこなすカメラマンは彼くらいではないでしょうか。勿論撮影後のデジタルグレーディングも丁寧に行われています。
音楽は素晴らしくミュージカル版同様クオリティがとても高いです。ミュージカル版にはないケイト・ハドソン演じるファッション記者が歌うオリジナルソングも素晴らしいです。
また、イタリアの美しい風景や60年代の美術デザインや衣装も素晴らしいです。
「NINE」は、映画が総合芸術であることを我々に視覚的に教えてくれるのです。
映画は概ね好評で、世界中の映画賞でノミネートされましたが「シカゴ」ほどの受賞と評価は得られませんでした。
私は東京のIMAXシアターで大画面&シネマスコープという贅沢な環境でこの映画を見ることが出来ました。あまりの素晴らしさにとても感動しましたが、約300人のお客さんの中で男性は私だけでした。やはり女性のほうが、芸術に敏感なのかなあと思いつつ、この映画を評価している日本人男性がきわめて少ないことに寂しさを感じました。
まだ日本は古いジェンダールールが残っているんだなあと気づかされた映画でもありました。
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グリーンゾーン [アメリカ映画(10s)]

Green Zone (2010)
アメリカの起こしてしまった大失態を暴く問題作を紹介します。
世界的にベストセラーになっている「A Young People's History of the United States」という本をご存じでしょうか?日本では「学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史」というタイトルで翻訳版が発売されています。
この本には、今まで語られていなかったアナザー・サイドのアメリカ史が書かれています。というより今まで知られていたアメリカの歴史は嘘の歴史で、真実の歴史を初めて文章化した本だとも言えます。
その本の最後の章に映画「グリーンゾーン」が描く内容についての記載があります。
アメリカによる、2003年に行われた「イラクの自由作戦」のことです。このイラク戦争は、イラクに他国を脅かす大量破壊兵器が隠されているという確実な情報を元に行われた戦争でした。しかし、それより10年ほど前から国連は何度もイラクを視察していて、大量兵器は見つかっていませんでした。この戦争について、国連のスタッフや知識のあるマスメディアは、疑問を示しました。しかし、2001年の9.11テロによる感情的なアメリカ国民は、冷静さを失っており、ブッシュ大統領を全面的に支持し、本来は9.11テロとは全く関係のないイラクに侵攻していったのです。
当時、我々も大量破壊兵器がイラクにあるんだったら、直接9.11テロに関係なくてもイラクをたたいておいたほうが良いと思ったのです。日本のマスコミは自分たちでろくに取材もせず、ロイターやCNNからの情報を訳して放送しているだけなので、日本国民のおおくは、アメリカ国民と同じように国家の判断に従ったのでした。
しかし、この後とても恐ろしいことがわかりました。
大量兵器は存在しなかったのです。
この事実は、ひっそりと報道されました。なので、日本ではそれほど大騒ぎにはならなかったのですが、よく考えるととんでもないことです。近代史においてここまで国家が国民、いや全世界で生きている人々に対し間違いを伝えるという事件があったでしょうか?
さらに驚いたことに、大量破壊兵器が存在するという情報は、そもそもアメリカ政府がねつ造していたという可能性があるという事実が明るみに出てきたのです。
そう、イラク攻撃のためにアメリカ政府は世界中に嘘をついていたのです。
これによりイラクでは民間人数千人が命を落としました。精度の高いミサイルを使っているので、民間人の巻き添えは最小限ですというアメリカの発表も嘘で、バグダッドでは、家族が休暇で宿泊していた観光ホテルが爆撃され、さらに爆撃機はそのホテルに戻ってきて攻撃を加えました。
この驚くべき事実は、はるか昔のお話ではなく、つい数年前に起こったのです。
平和ぼけ日本では、こんな世界史に刻まれるべき大問題はほとんど報道されず、おおくの日本人は知らないこととなっています。
前置きが長くなりましたが、映画「グリーンゾーン」のお話です。
監督のポール・グリーングラスは、アメリカが犯した「歴史上最大の嘘」を映画化したいと思っていました。映画という手法を使えば、この酷い出来事の真実を知らない人々にも事件を知らせることが出来るのではないか、と。ただし、ドキュメンタリーを作ってもそれほどおおくの観客は獲得できないですし、話題にもならないでしょう。グリーングラスは、ドラマ性のある映画で、真実を伝えたかったのです。
取材を始めるとワシントン・ポスト紙の元バグダッド支局長、ラジブ・チャンドラセカラが書いた「グリーンゾーン」という本に出会いました。グリーングラスは、この本をベースに映画を制作することを決意し、さらに取材を進めていきました。
ご存じの通り、グリーングラスはイギリス人で元ドキュメンタリー映画の制作者です。彼は取材は得意で精力的に動きます。映画の重要なファクターはストーリーテリングです。事象が羅列されるのではなく、登場人物に感情移入できて、メインキャラクターがドラマ的な展開を行わなくてはなりません。グリーングラスは主人公となるべきモデルを探します。そして遂にモンティ・ゴンザレスという軍人をみつけます。ゴンザレスの任務は、イラクで大量破壊兵器が存在すると思われる場所を捜索することでした。しかし、いくら探しても兵器は見つからないのです。そしてだんだん何かがおかしいと思い始めます。
ゴンザレスの体験は、グリーングラスも私たちも疑似体験できます。
イラクに大量破壊兵器がある→なんとか排除しなければ行けない=世界平和を願う→兵器がないぞ?=疑問&混乱
映画は、その真相を暴いていくのです。
グリーングラスは、「ボーンス・プレマシー」と「ボーン・アルティメイタム」で一緒に仕事をしたマット・デイモンに声をかけます。デイモンこそが主人公を演じられる役者だと監督は確信していたのです。デイモンは、直ぐにこの企画にサインをします。そして映画化が具体化していきます。制作出資はボーン・シリーズと同じ会社です。配給も同じです。制作過程では、メンバーが同じなのでボーン・シリーズの第4作目が作られていると思われていましたが、実は全く違う映画でした。
グリーングラスは、「ユナイテッド93」、ボーン・シリーズで確立したリアリズムを徹底するため、プリプロダクションを綿密に行い、まるでイラクの最前線基地にいるような映像を作り出しました。勿論イラクで撮影しているわけではなく、スペイン、モロッコ、イギリスで撮影され、CGによってイラクを作り出しています。
そして遂に「グリンゾーン」は、リアリティのある戦争サスペンス映画として完成します。映画としてとても高いレベルで完成した素晴らしい作品となりました。
結果、マット・デイモン主演の戦争アクション映画にみえるこの映画は「アメリカの大嘘」に興味のない映画ファンを取り込むのに成功します。
「グリーンゾーン」とは、イラクにおける安全地帯という意味です。でも、この映画を見終わると我々はグリーンゾーンにいる嘘をついたアメリカに荷担していることに気づくでしょう。そして、そういう自分に驚き考えを改めなければいけないと思うかもしれません。
ただのアクション映画だと思っていると、それ以上深い深いテーマが刻み込まれているグリーングラスらしい映画です。
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学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史〈上〉1492~1901年
学校では教えてくれない本当のアメリカの歴史〈下〉1901~2006年
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第82回アカデミー賞 授賞式 3/3 [映画賞・映画祭]

The 82nd Annual Academy Awards
1回、2回に続き、09年度アカデミー賞を詳しくお伝えしていきます。
今回が最終回、いよいよメインの賞が発表されます。

編集賞:Editing
プレゼンターは、タイラー・ペリーです。「編集者は、撮影されたカットを選びます。役者にとってクローズアップの撮影は怖い感じがします。(役者を綺麗に見えせるため)300,000万ドルもする照明機材やレンズ、「アバター」のようなCG技術が必要かも。冗談です。では、ミディアム・ショット。これは見栄えが良く、アラも目立ちません。ワイド・ショットもあるけれど、私はミディアムがいいです。では、客席の皆さんをワイド・ショットで。」すると、画面が会場のワイド・ショットになりました。「そして、司会者の今の様子」すると、カウチで毛布にくるまりテレビを見ているさえない司会者2人が映りました。会場は大爆笑です。「これで、映画の編集の仕事がわかったと思います。」
これでは、映画の編集はわかりにくいので、補足します。編集者は膨大な量の撮影済みフィルムからOKカットを選び、地道に編集していきます。米国映画の場合は、まずマスターショットを撮影し、クローズアップ、ミディアム、ワイドなどの撮影を行っていきます。編集者は台本通りにただフィルムを繋げるのではなく、シーンによってクローズアップを選んだり、ワイド・ショットを選んだりして、映画にメリハリを付けていきます。勿論、カットによって観客は感じ方が大きく変わるので、編集で映画は良くも悪くもなります。
ノミネートは、『アバター』、『第9地区』、『ハート・ロッカー』、『イングロリアス・バスターズ』、『プレシャス』でした。
受賞は、『ハート・ロッカー』のボブ・ムラウスキーとクリス・イニスでした。二人は初ノミネート、初受賞です。この二人は夫婦でもあります。ムラウスキーは舞台に上がるといきなり「ホラー映画にはロジャー・コーマン!今夜は良い夜だね。」と発言。イニスは、「初めて仕事をくれたサム・ライミに感謝します。そしてスタッフに。」「スタジオの意見に左右されず自由に作った映画です。ありがとう。」
ロジャー・コーマンはじめ、サム・ライミも『ハート・ロッカー』に関わったスタッフも、スタジオに抵抗してきた人々です。こういうクリエイティブ・オリエンテッドなスタッフが受賞するのはとても素晴らしいことです。
◆◆◆最優秀作品賞ノミネート作品紹介◆◆◆
キアヌ・リーブスが、『ハート・ロッカー』を紹介しました。

外国語映画賞:Foreign Language Film
ペドロ・アルモドバルとクエンティン・タランティーノの登場です。タランティーノは「貴方に会えて嬉しいです。長い間貴方のファンでしたよ。」アルモドバルは「私は君の映画は大好きだ。セリフの意味がわからないけど・・。」外国語映画賞のプレゼンターにはぴったりな二人です。
ノミネートは、『Ajami』(イスラエル)、『The Milk of Sorrow』(ペルー)、『Un Prophete』(フランス)、『瞳の奥の秘密』(アルゼンチン)、『白いリボン』(ドイツ)でした。
受賞は、『瞳の奥の秘密』のファン・ホセ・カンパネラ監督です。監督は「アバターのナヴィ語が外国語映画賞の対象でなくて良かった。」と発言しました。
◆◆◆最優秀作品賞ノミネート作品紹介◆◆◆
キャシー・ベイツが、『アバター』を紹介しました。

主演男優賞:An Actor in a Leading Role
主演男優賞候補の映像が編集され上映されました。
上映が終わると、舞台には蒼々たる顔ぶれが登場します。ミシェル・ファイファー、ヴェラ・ファミーガ、ジュリアン・ムーア、ティム・ロビンス、コリン・ファレル。彼らは賞のプレゼンターではなく、ノミネートされた俳優のプレゼンターです。
ミシェル・ファイファーがジェフ・ブリッジスを紹介しました。「『ファビュラス・ベイカー・ボーイズ』の撮影初日、ジェフ・ブリッジスと私はメイク担当が同じでした。2時間をかけて私の顔から欠点を取り除いた後、彼女は、私から取り除いた欠点を彼に植え付けたのです。ジェフはそれほどリアリティを追求します。彼こそが真の俳優です。」「私は撮影の間に、3人の娘さんと遊んでいるのを見ました。仕事とプライベートの両立ができると教えてくれたのもジェフです。」「さらに、ジェフは毎年のように素晴らしい演技を披露します。『Crazy Heart』もそのうちの1本です。
ヴェラ・ファミーガがジョージ・クルーニーを紹介しました。「ジョージ・クルーニーの恋人を演じる前に、ちょっと怖じ気づいたと思いますか?そう、その通り。でも彼にあってホッとしました。輝いた瞳、いたずらっぽい笑顔で、暖かく包み込んでくれます。共演者を立て、最高の芝居をさせることを考えてくれます。その優しいさは、スクリーンの上でもそれ以外でも同様です。人柄が良く幅広い役を演じ、監督としても一流です。そしてファンタスティックな色男。ある人が言ってました。「夢の男だね!」と。ジョージ、おめでとう。」
ジュリアン・ムーアがコリン・ファーズを紹介しました。「『シングルマン』で、コリンと私が演じたのは20年間親友だった男女です。でも撮影時は初対面でした。共演したのは3日だけ。彼の評判は聞いていたので楽しみにしていました。しかし彼はその期待を大きく超えていました。気さくで、チャーミング、ユーモアがあり親切。本当に長年の親友だと錯覚するほどでした。コリンの素晴らしさを知り尽くすには3日では足りません。」
ティム・ロビンスがモーガン・フリーマンを紹介しました。「モーガン、貴方とは『ショーシャンクの空に』で共演しました。そしてオスカー候補になりました。親友同士を演じた私たちにも現実世界で友情が生まれました。クランクアップの日に貴方が言った言葉が忘れられないです。「友達になると言うことは相手のためにコーヒーを炒れることだ、できるか?テッド」私はテッドじゃない」会場は失笑。「それほど仲良くなっていきました。モーガンは誰より心の広い人です。そしてマスターです。共演者は誰でも例外なく大きな刺激を受けます。仕事に対して真面目な人ですからマンデラ役でのノミネートは不思議ではありません。」「モーガン、貴方の才能に経緯を表します。」
コリン・ファレルがジェレミー・レナーを紹介しました。「ジェレミーとは『S.W.A.T.』で共演し撮影以外でも一緒に遊びました。メキシコに行ったよね。殆ど記憶がないけど。でも一つのベッドで寝たことは忘れていないよ。言っておきますが何もなかった。」会場は大爆笑です。「単純なアクション映画でもジェレミーは輝いていました。そしてジェレミーは誰とでも同じように接していました。『ハート・ロッカー』ので友人の芝居を見るのもとても嬉しい経験でした。20年の俳優人生で遂に才能を発揮できる役に出会えましたね。政治的なことを追い求めた映画ではない。だからひとりの男の姿が真に迫ってきます。ノミネートされて当然です。グッドラック、ジェレミー。」
プレゼンターは、昨年主演女優賞受賞したケイト・ウィンスレット。
ノミネートは、『Crazy Heart』のジェフ・ブリッジス、『マイレージ、マイライフ』のジョージ・クルーニー、『A Single Man』のコリン・ファース、『インビクタス/負けざる者たち』のモーガン・フリーマン、『ハート・ロッカー』のジェレミー・レナーでした。ちなみにabcの事前アンケートでは、ジェフ・ブリッジス、35%。ジョージ・クルーニー、20%。コリン・ファース、8%。モーガン・フリーマン、26%。ジェレミー・レナー、11%でした。
受賞は一般視聴者も支持したジェフ・ブリッジスでした。会場全員がスタンディングオベーションをおくりました。

主演女優賞:An Actress in a Leading Role
主演女優賞候補の映像が編集され上映されました。
上映が終わると、男優賞と同様、舞台には蒼々たる顔ぶれが登場します。フォレスト・ウィテカー、マイケル・シーン、ピーター・サースガード、オプラ・ウィンフリー、スタンリー・トゥッチ。
フォレスト・ウィテカーがサンドラ・ブロックを紹介しました。ウィティカーは、『ラストキング・オブ・スコットランド』でオスカーを手にした俳優です。『しあわせの隠れる場所』で、サンドラ・ブロックが演じるのはタフな女性です。感情を出しません。彼女は引き取った若い男に自分専用ベッドは初めてだと言われます。そのときサンドラは目で感情を表現していました。私は監督として『微笑みをもう一度』で彼女と仕事をしました。なにげなく演じているようでしたが実はデリケートで複雑な芝居をしていました。とてもきめやかで魔法のような演技。それが女優・サンドラ・ブロックです。」
マイケル・シーンがヘレン・ミレンを紹介しました。「全ての英国首相は、ヘレンのような女王と良い関係になるべきです。私はヘレンが女王に扮しオスカーを受賞した『クイーン』で共演しました。」シーンは、英国首相役でしたね。「撮影中にいつも思うことがありました。こんなに女王に惹かれて良いのだろうか、と。エリザベス女王ですからね。」会場は笑いに包まれました。「しかし女王のメイクが落ちてくると見ヘレンの手に蜘蛛の巣のタトゥーが出現します。才能と勇気とタトゥーを持ったヘレン・ミレン。女王も伯爵夫人も演じられるのです。オスカー・ノミネートおめでとう。」
ピーター・サースガードがキャリー・マリガンを紹介しました。「キャリー・マリガンと私は2回恋に落ちています。演技上のお話しです。1回目は舞台、2回目は『17歳の肖像』です。酷い仕打ちをしました。結婚していると黙っていて申し訳ない。優雅で知的な人物の複雑な演技を見事に演じました。幸いに私たちはまだ若いので、今後も素晴らしい演技を見ることができるでしょう。こうやって賞されるのはどんな感じですか?きっとこれからも讃えられることがおおいので慣れたほうがいいですよ。」
オプラ・ウィンフリーがガボリー・シディベを紹介しました。「彼女は、大学に行くつもりでした。しかし月曜日に学校をサボって『プレシャス』のオーディションへ行きました。火曜日に電話があり、リー・ダニエルズ監督と会うことになりました。水曜日に主演が決定します。そして今夜、同じ部門でメリル・ストリープと同じオスカー候補者です。これぞハリウッドのおとぎ話です。」シディベは、涙を流していました。「『プレシャス』で厳しい現実におかれた主人公。あの演技はどこから来たの?楽しくて前向きで輝いているあなたが人々の心に訴える絶望的な少女に変身しました。どややればあんなお芝居ができるの?あなたはまるでアメリカ版シンデレラです。女優として今新しいキャリアを歩こうとしています。これからも沢山の賞賛を浴びることにになるでしょう。おめでとう、ガボリー・シディベ。」
スタンリー・トゥッチがメリル・ストリープを紹介しました。「メリル、何かかお話ししましょうか。世界中の人と同様、私も貴方を愛しています。貴方と共演した2作品は私の代表作です。演技はいつも素晴らしい、その上、有名女優なのにいつも優雅で謙虚。これはすでに誰もが知っていることですね。誰も知らないこと、貴方はユーモアがあって優しく協調性がある。そんな理想的な共演者ですばらしい友人です。しかし賞や栄誉と言った分野ではあなたはどうも独り占めする傾向にあるようですね。そこで私はアカデミーにある提案をしました。俳優のノミネートは16回までと。そうなればこれが最後になるんです。好きか嫌いかは別として誰もがメリル・ストリープは最高の役者だということを認めています。
プレゼンターは、昨年主演男優賞受賞したショーン・ペン。「ボクは正式なアカデミー会員ではないです。アカデミーもボクも昨年は優れた女優への感謝を怠っていたように思います。今日は気持ちをリフレッシュして素晴らしい女優を讃えたいです。というコメントをしました。
ノミネートは、『しあわせの隠れ場所』のサンドラ・ブロック、『The Last Station』のヘレン・ミレン、『17歳の肖像』のキャリー・マリガン、『プレシャス』のガボリー・シディベ、『ジュリー&ジュリア』のメリル・ストリープでした。
ちなみにabcの事前アンケートでは、サンドラ・ブロック、55%。ヘレン・ミレン、4%
。キャリー・マリガン、5%。ガボリー・シディベ、17%。メリル・ストリープ,19%でした。
受賞は、『しあわせの隠れ場所』のサンドラ・ブロックでした。数日前に行われたラジー賞では、最低女優賞を受賞し、ちゃんと授賞式に出席したブロックが、今度はアカデミー主演女優賞を受賞です。
舞台に上がり、オスカー像を受け取った彼女は「私の実力?それとも皆さんが諦めたの?」と発言。会場は失笑でした。「アカデミー賞のおかげで、この1ヶ月間は様々な人たちと時間を共有できました。将来仕事をしたい方々です。皆さんは私の憧れです。この賞は4人の女優さんと共有したいです。ギャビー、言葉にならないほど素晴らしい。キャリー、あなたの優雅さと美貌は嫌みです(笑)。ヘレン、私は貴方を家族と思っています。メリル、貴方は本当に期すが上手ですね。」『スピード』で有名になった彼女はここまで立派になりました。彼女は、映画関係者への謝辞を述べました。そのなかでジョージ・クルーニーに対して「私をプールに突き落としたことを今でも恨んでいます」というコメントは会場で受けていました。そして母親への感謝の言葉。このあたりからブロックは涙を見せます。
サンドラ・ブロックのスピーチは誰もが心を奪われ、彼女自身がとても魅力のある女性だということがわかるものでした。

監督賞:Directing
プレゼンターはバーブラ・ストライサンドです。「今夜、5人の優れたノミネートから誰が選ばれるのでしょうか?女性だったら史上初です。もしかしたら史上初のアフリカン・アメリカンかもしれません。自ら脚本も手がけた3人の内の誰かかもしれません。1人は史上最高の興行成績を記録した人物です。皆さんにおめでとうと言いたい。」
ノミネートは、ジェームズ・キャメロン(『アバター』)、キャスリン・ビグロー(『ハート・ロッカー』)、クエンティン・タランティーノ(『イングロリアス・バスターズ』)、リー・ダニエルズ(『プレシャス』)、ジェイソン・ライトマン(『マイレージ、マイライフ』)。
ちなみにabcの事前アンケートでは、ジェームズ・キャメロン、49%。キャスリン・ビグロー、27%。クエンティン・タランティーノ、14%。リー・ダニエルズ、5%。ジェイソン・ライトマン、4%でした。
受賞は、キャスリン・ビグローでした。ストライサンドは、名前を読み上げる前に「ついにやった!」と発言、これにビグローはハッとします。ビグローの1列後ろにはかつての旦那であり、今回監督賞を争ったジェームス・キャメロンがいました。キャメロンも直ぐに立ち上がり拍手を送りました。会場にいる全員がスタンディングオベーションをおくりました。ビグローは声を震わせながら「人生最高の瞬間です。」とコメント。「とても力のある監督達、影響され崇拝してきた方々と一緒にノミネートされたことが信じられなかったです。アカデミー会員の皆さん、ありがとうございます。この賞をイラクやアフガニスタンや世界で毎日命をかけて頑張っている彼らに!Come Home Safe.」
私はビグローと仕事をしたことがあります。とても背が高く美しかった。そして凛とした信念がある人でした。それはいまから10年以上も前の話です。驚いたのは、その当時と見かけがほとんど変わっていないことです。彼女は1951年生まれです。現在58才。そんな才能と美しさを持つ人物が史上初の女性の最優秀監督賞を受賞しました。ちなみに現在も元夫のジェームス・キャメロンとは仲がいいそうです。

作品賞:Best Motion Picture
トム・ハンクスの登場です。「作品候補が10作品というのは1943年以来、当時は戦争中で作品賞は『カサブランカ』でした。簿ガードとバーグマンが出演した名作と同じ栄誉に輝く作品の発表です。受賞は『ハート・ロッカー』。」
ノミネートは、すでに各賞の合間で行っていたので、ここでは紹介されませんでした。ちなみにabcの事前アンケートでは、『アバター』、54%。『しあわせの隠れ場所』、8%。『第9地区』、2%。『17歳の肖像』、1%。『ハート・ロッカー』、18%。『イングロリアス・バスターズ』、6%。『プレシャス』、3%。『A Serious Man』、1%。『カールじいさんの空飛ぶ家』、5%。『マイレージ、マイライフ』、2%。でした。
『ハート・ロッカー』は、9部門でノミネートされ、6賞でオスカーを獲得しました。スピーチは、とても素晴らしいものでした。「自分たちは自分たちのやりかたでここに集う才能を使い映画を作ると決めたのです。うまくいけば配給会社が見つかり気に入ってもらえるかもしれないと作業をしました。だからここに立てるとは思ってもみませんでした。サミットに感謝します。」「世界中の制服を着て仕事をしている人にこの賞を捧げます。」
『ハート・ロッカー』は、スタジオや企業の論理に左右されず、信頼できる少数のスタッフたちが作り上げた小作品です。先導が少ないので、自分たちのカラーが色濃く出ます。もし、ここに企業が入っていたら「恋愛を入れろ!」とか「もっと爆発シーンを増やせ」とか「有名な役者をキャスティングしろ」と口を挟んだはずです。このような介入をしないで配給をしたサミットは、確かに素晴らしいです。ご存じの通り、近年サミットは急速に成長している企業です。ヒット作がたくさんあります。きっとサミットは、大企業病に陥っていない唯一の映画配給会社なのではないでしょうか。
そして、フィナーレ。司会のスティーブ・マーティンは、「授賞式が長すぎるから『アバター』でさえ古く感じるよ。」「アレック、君は俳優、コメディアン、そして人間としても最高だよ。」アレックは「良い締め言葉だ!」
アカデミー賞は、世相を反映します。もし、現在アメリカが兵士を中東に派遣していなかったら、こういう結果になったでしょうか?戦争は、エンターテイメント業界にも大きく影響したのです。といいつつ、アメリカ人のインディアン侵略を模したような作品には肯定的になれないという側面もあります。また別次元で見ると、大手スタジオの勢力を減らしたいと思うスタッフの気持ちも働いています。
実は、アカデミー賞にノミネートされた作品や人々はすでに十分素晴らしいのです。ノミネート作品は全て見るべきですし、見て満足できます。最優秀賞は、外的環境、内的環境によるところが大きいです。
皆さん、是非ここに記された作品を見て、ご自身で最優秀賞を選んでみてください。映画に関する認識がきっと変わるはずです。
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